あなたが運命の番ですか?
「お湯、熱くない?」
「うん、大丈夫」
 私たちはあの後、汗を流すために浴室へ向かった。
 そして、私は今、後ろから優一郎くんに抱きしめられた状態で、湯舟に浸かっている。
 体力を使ったせいもあるが、湯舟と優一郎くんの体温の暖かさで、私はついウトウトしてしまう。

「ごめんね。俺、舞い上がっちゃって……。途中から調子に乗ってたと思う。身体、大丈夫?」
「うん、大丈夫、平気だよ。むしろ、優一郎くんのおかげで、身体は全然平気。ありがとう、優一郎くん。私、初めての人が優一郎くんで良かった……」
 私は優一郎くんの丁寧な愛撫を反芻しながら、彼に感謝を述べる。
 
 私の耳元で、優一郎くんが息を()む声が聞こえた。
「……俺も、初めての相手が寿々ちゃんで良かった」
 優一郎くんはギュッと私を強く抱きしめながら、照れ臭そうに呟いた。

 今、何時だろう?もう家に帰らなきゃダメだよね。
 そんなことを考えていると、私は途端に名残惜しくなった。
 家に帰るのが嫌というわけではないけど、優一郎くんと別れるのが寂しい。もっと一緒にいたかった。もっと色んな場所へ行きたい。

「ねぇ、優一郎くん。また、私とデートしてくれる?」
 私を抱きしめている優一郎くんの腕に、私はそっと手を添える。
「うん、もちろん。今日行くつもりだったカフェのリベンジもしたいし……。今度は、ちゃんと下調べしてから行くことにするよ」
「うん、楽しみにしてる」
 私は、その日が来るのを待ち遠しいを思った。

「はぁ……、帰りたくないな」
 優一郎くんはため息を吐きながら、ポツリと呟いた。
 私はその言葉に、ドキッと胸が高鳴った。
 優一郎くんも、私と同じ気持ちなんだ。
 
「私も、帰りたくないな」
「ふふっ、一緒だね」
「うん、そうだね」
 好きな人と同じ気持ちになることって、こんなにも嬉しいんだ。

「寿々ちゃんと番になって、一緒に暮らし始めたら、ずっと一緒にいられるよね?」
「えっ――!?う、うん、そうだね」
 優一郎くんの口から「一緒に暮らす」という言葉が飛び出して、私は度肝を抜かれた。
 でも、確かにそうだ。番になって、夫婦になったら、私たちは一緒に暮らすのか。
 
「待ち遠しいな……」
 優一郎くんの言葉に、私はドキドキする。
「私も、待ち遠しい」
 
 私は、今までずっと将来に不安しかなかった。オメガである私が、将来どんな人生を歩むのか想像もつかなかった。
 だけど、優一郎くんと家族になれるのならば、将来が楽しみでしかない。

「俺ね、夢があるんだ」
「ん?優一郎くんの夢?」
「うん、そう」
「それは……、お母さんの会社を継ぐこと?」
「ふふっ、まあ、それも『夢の一部』かな?」
 優一郎くんはギュッと私の身体を強く抱きしめる。
 
「俺の夢は、『寿々ちゃんが、俺の隣でずっと笑っていてくれること』」
「えっ……」
 私は驚くと同時に、胸が高鳴った。
 
「寿々ちゃんがずっと笑顔でいられるような家庭を築きたい。そのためにたくさん勉強して、仕事を頑張って、寿々ちゃんに良い暮らしをさせられるような大人になりたい。それが俺の夢……」

 優一郎くんの淀みのない真っ直ぐな気持ち。
 嬉しい。こんなにも私のことを大切に想ってくれる人と番になれるなんて、私は本当に恵まれている。

「それなら、私の夢は、『優一郎くんが私の隣でずっと笑ってくれること』――。優一郎くんがずっと笑顔でいられるように、優一郎くんを支えられるような人になりたい」
 私も、真っ直ぐな気持ちを伝える。

「ふふっ、ありがとう。嬉しいな」
 優一郎くんの返事に、私は照れ臭さを感じる。
 
「一緒に夢を叶えようね」
 優一郎くんは、私の耳元で呟いた。
「うん、絶対叶えようね」
 私は優一郎くんの腕の中で、明るい未来を想像した。
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