あなたが運命の番ですか?

小さな彼女

 俺はベータ棟へ通じる渡り廊下の前で、春川さんを見送った後、教室へ戻るため階段を上る。
「あれ?前園くんじゃん」
 すると、踊り場で水瀬たちと鉢合わせた。
「あのオメガの子、もしかして前園くんの彼女?大人しそうな顔して、やることやってるんだねぇ。さっすが前園社長のご子息」
 水瀬はゲラゲラと笑う。
()()()()()()()()()()()()()から、番とかそういうの興味ないのかと思ってた。オメガでも男じゃ抜けないタイプ?」
 俺は下世話な話題を振ってくる水瀬を無視して、そのまま階段を上っていく。
 こんなゲスにだけはなりたくない。

 教室に戻って席に着くと、「おい、前園」とニヤついた顔をした佐伯が、俺の肩に手をポンと置いた。
「お前、いつ彼女できたんだよ」
 佐伯はそう言って茶化してくる。
 俺はそんな佐伯を見て、思わずため息が漏れた。
「……別に、そういうのじゃないよ」
「えっ?何か怒ってる?」
 困惑した様子の佐伯を見て、俺はハッとした。
「ああ、ごめん。お前に怒ってるわけじゃないよ……」

 ――()()()()()()()()()()()()()から、番とかそういうの興味ないのかと思ってた。

 橘くん、まだ水瀬たちと縁を切ってなかったのか。
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