涙の向こう側
わたしは半年前、最愛の夫を亡くした。
夫の明人は、いつもポジティブで男気があって、優しく思いやりがあって、ネガティブなわたしを明るく照らしてくれる人だった。
明人は建築関係の仕事をしており、ある日、わたしが作ったお弁当を持って行き忘れている日があり、現場が自宅からそう遠くなかった為、わたしは車で明人にお弁当を届けに行った。
現場に着くと、明人はビルの4階部分の足場に立っており、わたしに気付くと大きく手を振ってくれた。
「お弁当忘れてたよー!」
「あ、わざわざ届けに来てくれたの?!ありがとう!」
声を張って、そう会話したすぐの事だった。
明人が立っていた足場が崩れ落ち、大きな音を立て、明人は一瞬のうちに落下し、パイプと鉄板の下敷きになっていた。
「明人!!!」
わたしはすぐに明人に駆け寄ろうとしたが、危ないからと他の従業員に止められた。
すると、更に足場は次々と落下して来て、明人の姿が見えなくなると共に、地面は血の海と化した。
明人はすぐに病院に運ばれたが、助からなかった。
原因は、足場の組み立て方が不十分だった為だった。
そのあと、わたしは明人の両親に「あんたがお弁当なんて届けに行ったから、明人は足を滑らせて落ちたんだ!あんたが明人を殺したんだ!」と責められた。
最愛の人を亡くしたショックと、その最愛の人を殺したのはわたしだと責め立てられ、わたしの心は限界に達し、丁度妊娠が分かったばかりだったお腹の赤ちゃんも流れ、失ってしまった。
わたしは一気に大切な家族を二人も失い、脆くなっていた心は砕け散ったのだ。