* Snow gift *
 12月23日、午後11時50分。


 予想を遥かに超えた量の残業を終えた男は、それでも一人酒の気分を手放すことが出来ずに空いている居酒屋を捜し歩いていた。

 けれどこの時季忘年会シーズンであることも重なって、いきつけの店はどこもかしこも満員御礼。

 深夜だというのに皆明日を構わず盛大に盛り上がっていた。

「くそぅ……あんの野郎ついでのつもりで他の仕事まで押し付けやがったな……」

 それでもついついきっちりやってしまうのが男の性分。

 それこそがいつまでたっても“良い人”以上のランクに上れない理由なのだけれど、もはや男はこれを直す気はさらさらなかった。

 自分を無理に作り変えることは、それはもう自分ではないということだと考えているのだ。

 かといって、彼女が欲しくないわけではないのだけれど。

「ん~、あ、あそこは空いてる、かな?」


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