* Snow gift *
 12月23日、午後11時52分。


「うぇぇぇ……きモでィばどぅイ……」

 女の“独り”酒というのは往々にして度を越えたツボににハマることが多いらしく、彼女もまたそのひとりだった。

 なんとかお勘定を済ませて外に出たはいいものの、ふらついた足元を支えてくれるものはそこらの看板か“マスコット”くらいしかない。

 幸いなことに“次に”吐くまではもうしばらく余裕がありそうなのでさっさとタクシーを拾おうと考えるものの、

「ありゅぅえぇ? じめんがぁゆれてぅ?」

 どうにも大通りまで歩けそうな気配はなかった。

 しかたないので彼女はひとまず看板に寄りかかるようにして座り込む。

 コートの裾は汚れてしまうけれど今の彼女にとってそれはささいなこと。

「誰でもいいからかっこよくてやさしくてイケメンのやさしい人が迎えにきてくれないかなぁ……」

 支離滅裂もはなはだしいぼやきは乳白色の雲に化けて空へと上がっていった。

「贅沢なんていわないからぁ……」

 不意に、鼻の奥がつんっ、として目尻が熱くなってくる。

 立ち上がるのは、本当にもう、億劫で仕方なかった。

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