ホスト、田舎娘に振り回されてます!〜恋のプロが、ウブなアイツに本気になったら〜
ホスト vs 田舎のじいちゃん 〜外伝・修羅場 in 田舎〜
桃乃の地元での「スイカ割り決闘事件」から数日後——。
朔が、まさかの「指名客と田舎でバッタリ遭遇する」という、ホスト人生最大の修羅場に巻き込まれた。
***
「えっ……墨さん!?!?」
桃乃の家の近く、のどかな田舎道。
地元の小さな駅を降りた朔の前に、現れたのは——
ホストクラブの常連客・カオリ(推定年齢30代半ば)。
「え、ちょ、なんで田舎にいるの!? え!? なんでスーツじゃなくてTシャツなの!? え!? どういうこと!?」
「……いや、それはこっちのセリフなんだけど」
「え、もしかして、ホストって裏で副業とかやってるの? 田舎の地主の息子とか? 実は本当は農業後継ぎとか!?」
「ホストは急に農家にはならねぇよ」
「え〜!! だってそんなの怪しいじゃん!!!」
カオリが興奮していると、後ろから桃乃が走ってくる。
「墨さん、ごめん遅——……え?」
(桃乃、カオリと目が合う)
「え、桃乃ちゃん?? なんでここに?」
「いや、こっちのセリフですよ!? なんでここに!?」
「えっ、旅行で! のどかな場所に行きたくて!」
「えっ、旅行で!?」
「うん!」
「えっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
(謎の「えっ!?」の応酬)
沈黙。
そして、カオリはふと気づく。
「……ていうかさ」
「は、はい」
「墨さん、なんで桃乃ちゃんと一緒にいるの??」
「……」
「ねえ、なんで???」
「……」
「ねえねえねえねえ、なんでぇぇぇぇぇ!?!?!?」
「声デカい」
カオリ、動揺のあまり大声を上げる。
「まさか、まさかとは思うけど……!!」
「……」
「ホストが客の前でプライベートを見せてはいけないってホストの掟じゃなかったんですか!?!?」
「お前、掟に詳しいな」
「裏切りよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「裏切ってねぇよ」
「ホストは夢を売る仕事なのに、田舎で女子と二人でいるなんて!!! そんなの!!! そんなの!!!」
(カオリ、突然泣きながら地面に座り込む)
「田舎の大地が温かい……」
「情緒どうした」
そこへ——
「桃乃〜、スイカ食うか〜?」
じいちゃん、再登場。
そして、じいちゃんは目の前で倒れ込むカオリを見つけると——
「……ほう」
朔を鋭い目で睨む。
「……貴様、二股かけとるな?」
「ちげぇよ」
「証拠は?」
「ないけどちげぇよ」
「では、試してやろう」
「いやもう試すのやめて」
「貴様が二股野郎でないことを証明するには、田舎の試練を突破せねばならん!」
「だから、その“田舎の試練”ってなんだよ!?」
「今すぐ、田んぼに飛び込んで、カエルを捕まえてこい!!!」
「それ、ホスト関係ある!?」
「ある!」
「ねぇよ!!」
「あると言ったらあるんじゃァ!!!」
「どんな理論!?」
「ホストたるもの、自然と共に生きられねばならんのじゃ!!!」
「絶対違う」
その頃、カオリはというと——
「……田舎の空気、おいしい……」
(もはや泣き疲れて悟りの境地)
そして、朔は——
(田んぼに片足突っ込まされていた)