貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「どうしたっていうのよ」
 ららかはあくまで百合花を装って尋ねる。彼の手を取ろうとして、さっと振り払われた。

 迅はスマホを取り出すと電話をかけた。
 ららかの持っているバッグから着信が鳴り、ららかはスマホを取り出した。古びたユリのストラップがついている。

「ここにいるのになんで電話するの」
 バカにしたようにららかが言い、迅は眉間に皺を寄せた。
 電話を切ってスーツの内ポケットにスマホを戻し、無表情でららかを見る。

「疑ってるの? 顔認証でスマホのロックを解除したら理解する?」
 小バカにしたようにららかが言う。

「おい、迅?」
 隣の男性——真哲が不審そうに声をかける。
 迅は答えず、すぐに護衛の男に詰め寄る。

「百合花さんはお手洗いに行ったのか?」
「はい」
 護衛は即答する。

「出たあとどこへ行った!?」
「え? こちらがお嬢様では……」
 護衛が驚いて聞き返す。

「まったく違う」
 迅はうなるように否定する。自分には一目瞭然だが、他の人にはまったく違いがわからないようだ。
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