貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 お手洗いの中にはいくら護衛でもついていけない。だから女性の護衛をつけたかったのだ。そこで襲われたらと心配していたが、まさか入れ替わりが発生するとは思わなかった。

「なに言ってるのよ」
 ららかは平然と文句を言う。
「お前は百合花さんじゃない。姉のほうだ」
 ぎりっとにらまれ、ららかはムッとした。

「私が百合花よ! どうして信じてくれないの!」
「なにもかも違う」
 迅はあきれたように息をついた。
 真哲は黙ってなりゆきを見守っている。

「百合花さんは陶器のように美しくなめらかな肌だが、君は毛穴がたるんで肌にしまりがない。髪も痛んでいる」
「失礼ね! 双子なのに変わるわけないでしょ!」

「いくら双子でも環境によって状態は変わる。それから、君はピアスを開けているようだが、百合花さんはピアスを開けてない」
 ららかはとっさに耳に手を当てた。

 なんて目ざといの。
 ららかは迅をにらみつけた。せっかくのきれいな茶髪を黒く染めてきたと言うのに、これでは台無しだ。

「なによりもその口調。それでなりすましたつもりなのか」
 迅のあきれた声に、ららかはムッとする。

「私が百合花よ。なんで信じないのよ!」
「いつまで言い張る気だ」
 迅の気迫にたじろぎ、どうして、とららかは歯噛みする。
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