君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
アキ先生には私の心、何でもお見通しだって分かってた。
小さい頃に手術することになって不安だった時、アキ先生は本当に魔法使いみたいにふっと現れて。

「こんにちは、さゆちゃん。俺は東条彰史、適当にアキとか呼んで」

「アキ、先生?」

「うん、よろしく」

その時たまたま実習で小児科をまわってるって言ってた。
それで、私の担当になって。
最初はプレイルームで、一緒にあそんだりしてた。
その日は折り紙。

「ほら、これペンギン。あげるよ」

「わーかわいい!! じゃあ次これも!!」

「四つ葉のクローバーか、好きなの?」

「ううん、そうくんがすきなの。あげたらきっと喜ぶかなって」

「そうくんって?」

「さゆの将来の王子さま」

「ふぅん。もう居るんだ」

折り紙だけじゃなくて、図鑑を一緒に見たり、屋上まで散歩してくれたり、いつもアキ先生はそばに居てくれた。

手術が不安で泣いていた時には手を握っていてくれて、麻酔から目が覚めた時も、1番はじめに「もう大丈夫だよ」って言ってくれた。

アキ先生がいる場所が、私のいつも安心できる場所だったから。

「あのね……さゆ、アキ先生のこと好きだよ」

「あれ? そうくんはもういいの?」

「わかんない。でもアキ先生がそばにいくれたら。ずっと元気でいられる、そんな気がするの」

「じゃあ今日からオレがさゆの魔法使いだ」

「魔法使い?!」

「うん、シンデレラをお城につれていくために、かぼちゃの馬車に乗ってやってくる役」

「さゆそれ知ってる! 先生がさゆをお姫様にしてくれるの?」

「うん、0時なったって、きっとずっと解けない魔法をかけてあげるよ」

アキ先生はそう笑って応える。
きっと優しさから出た言葉だと知っていたのに。
いつの間にか本気になって、本当に心からアキ先生のことが好きになっていった。
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