君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
「さゆ、ちょっと歩けるか」

「ん?」

「俺たちの秘密基地、いまから行こう」

「え、いいの!?」

「久しぶりに俺が行きたくなったんだよ」

「やったぁ」

私たちが出会った、秘密基地。
丘を登ったそこはいつも静かで誰もいない空き地。
だけど、この街が見渡せる。

「無茶はするなよ」

そう言って奏は私のペースに合わせてゆっくりと歩いてくれた。
私もゆっくりゆっくり丘を登った。

「奏……」

「ん?」

私のカバンまで持ってくれる奏。
振り返ったその顔は、あの頃とは違くて。
お兄さんみたいに、逞しくて。
ほんとにどんどん絵本の王子様みたいになっていく。

「ありがと。いつも私が元気ない時、そばに居てくれて」

「何言ってんだ。当たり前だろ。約束したから」

「ふふっ」

ずっと一緒にいる約束、覚えてくれてたんだね。

「なんだよ」

「まだ、有効なんだ?」

「はぁ? 来世も来来来世まで有効だ」

「えー」

不満そうにするな、とゲンコツされた。
奏の真っ直ぐな思い、すごく愛しいと思った。
< 29 / 91 >

この作品をシェア

pagetop