君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
4. 永遠なんてあるわけなくて
家の駐車場にはやっぱり車が停まってなかったからお母さんはしばらく帰ってこないみたいだ。
そこにアキ先生の車を停めてもらった。
アキ先生をリビングに案内してゆっくりしてもらう。

「アキ先生はシャワーとか着替えいいの?」

「ん。病院でテキトーに済ませたから平気。さゆはゆっくりしてきな」

「やだよ! ランドで遊ぶ時間減っちゃうじゃん」

「わかったわかった。でも無理したら即帰宅だからな」

私は頷いて、2階の自室に着替えを取りに行った。


------------------


さゆが着替えとシャワーを浴びに2階へと上がって行った背中を見送ると、俺は立ち上がり、さゆのお父さんの遺影に手を合わせた。

さゆのお父さんはさゆと同じ病気だったと知っている。カルテも見たが、現代の医療技術を持ってしても、限界があったと言える状態だった。

その時、ガタッと玄関から音がした。
立ち上がり、玄関の方を覗くと久しぶりに見る顔があった。
すっかりたくましくなって、制服を着た姿が大人に見える。

「東条先生……? なんでさゆの家に?」

「何言ってんだよ、奏くん。主治医がいたら何か問題が」

だから俺は敢えて、少しからかうように彼に向けて笑った。

「そんな事ないけど。さゆは今日学校だから。もしかして体調になんかあった?」

「元気だよ。でも今日は休ませる。もうさゆには時間ないこと、本当は分かってんだろ?」

「……はい。だからってさゆから日常を奪っていい訳ではありません」

「違うよ。女ってのは一瞬でも輝いてる時間があったら一生分幸せになれる生き物なんだよ」

彼は少し躊躇って。でも迷いなく応えた。

「俺はそう思わない。2人で描いてきた当たり前の日常だって、積み重ねてきた過去だって。2人を照らす希望になるって信じてる」

「どっちを選ぶかはさゆが決めること。なぁ、今日は俺がいるから安心して学校行きなよ、そうくん。また明日でも家に来たらさゆがいるよ。そのさゆの姿を見て君が判断したらいい」

「……分かり、ました。明日来るってさゆに伝えておいてください。あとどうか無理はさせないように」

「俺を誰だと思ってんだよ」

はは、ですね。と大人しく玄関を閉めて帰っていった。
さゆはきっと彼が来たことにすら、気がついていないだろう。
< 41 / 90 >

この作品をシェア

pagetop