君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
アキは何も言わずに運転をして家まで送ってくれる。
と言っても、三人一緒に住む奏の家なんだけど……

「さゆ、俺、今日からは自分のマンション帰る」

「え。なんで」

「なんでって、さゆの1番、決まったんだろ。何年そばにいてお前をみてると思ってるんだ」

「アキ……」

「もうあまり時間はないけど、精一杯自分の気持ち、伝えてやれ。それがアイツの生きた理由になる」

「うん……アキ、ごめん」

そうするとデコピンされた。

「こういう時はごめん、じゃないだろ?」

「ありがとう」

「うん。俺はさ、さゆのこと一番に愛してる。でもそれは未来のさゆだから。今のさゆを縛りたくはなかった。だから最初から告白を断って、俺のところに戻ってきてくれるのをちょっと期待して待ってた。実は今も、待ってるけどな」

「ふふ」

するとまたデコピン。痛すぎる。

「世界は残酷で、平等なんかじゃなくて、でもだからこそ美しい。俺はそう思う。だから、楽しんで、笑っていて、さゆ」

「うん……。アキ、私もいつかあなたに伝えたいことがある。最期までには必ず……必ず伝えるから。今は奏との時間を大切にさせて」

「分かった。待ってる」

そうして車は走り去っていく。
アキ先生……アキ……さようなら。
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