君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
車に戻って、ハンドルに顔を埋める。
涙が溢れてくる。
分かってる。この時代のさゆにはこの時にしかできないさゆの人生がある。分かってた。
でも嗚咽のような声が出てきて、涙は止まらない。

「さゆ……」

もう、俺には帰るとこなんてない。
この世界でさゆを生きさせることだけに全力を注いできたから。
その隣にいるのが、たとえ俺じゃなくても、ずっと諦めない。
医者として支えていく。

ピピピ……

ふと、端末にメッセージが届いたのが分かった。
それは俺が使っていた未来の端末で、連絡など入るはずもないのに。

『アキ、おかえりなさい。
私はこっちでずっと待ってるからね
さゆ』

おかしい。
さゆは死んだはずなのに。
予約送信……?

ピピピ……

何かを察したようにまたメッセージ

『聞いて。どうかアキにこれが届いて。昔私が伝えたこと何度でも忘れないで。わたしたちはーー』

そこからはノイズで見えなくなっていた。
どういうことだろう。
でも、久しぶりの向こうのさゆの気配を感じられた。
俺は少しだけ安心して、その夜は眠った。
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