色褪せぬ恋のポラロイド
「え?!慧吾様がご帰国されるんですか?!」
オボンに乗せた朝食をダイニングルームに運びに行くと、わたしと同じ家政婦の静恵さんの声が聞こえてきた。
「そうなの。明日は、慧吾の20歳の誕生日でしょ?だから、お客様をお招きして誕生日パーティーを開く予定なのよ。」
そう言ったのは、この神城家の夫人である亜也子様。
神城家の奥様はとても上品でお綺麗な方で、わたしたち家政婦にも優しくして下さる素敵な御方だ。
「ホテルの会場を貸し切って行うから、ほとんどはホテルのスタッフ方がやってくださるんだけど、静恵たちも少しお手伝いで来てもらえないかしら。」
「はい!もちろんです!慧吾様のお誕生日パーティーですもの!ね?鈴!」
突然、静恵さんに話を振られドキッとしたが、わたしは「はい、もちろんです!慧吾様が20歳だなんて、、、きっと素敵になられてご帰国されるんでしょうね。」と言い、旦那様、奥様、そしてご長男の真吾様の朝食を並べていった。
慧吾様は、神城グループの会長、神城宗吾様のご次男で写真家になる夢を叶える為に15歳の時にカナダに留学されたのだ。
それ以来、一度も帰国されて居ない為、慧吾様のご帰国が決まり、神城家一族だけではなく、わたしたち家政婦も楽しみでしかたなかった。
わたしがこの神城家にやって来たのは、18歳の時。
施設育ちで18歳には施設を卒業しなくてはいけなくなり、行く宛もなく彷徨っていたわたしを家政婦として迎え入れてくださったのが、神城家の旦那様だった。
御夫婦揃って穏やかで優しく、わたしは神城家に救われたのだ。
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