色褪せぬ恋のポラロイド
そんなわたしが神城家に住込み家政婦としてやって来た時、慧吾様はまだ10歳だった。
活発でヤンチャな慧吾様は、いつもわたしのあとについて歩いて来ては「鈴!遊んでよ!」とねだり、お昼寝の時はわたしの膝枕で寝るのが好きだった。
しかし中学生に上がり、いつしか話す機会も減り、慧吾様が男の子から少年になっていく姿に嬉しさと共に寂しさを感じた事を思い出す。
そんな慧吾様が13歳のお誕生日の時に旦那様からポラロイドカメラをプレゼントされ、それをきっかけに慧吾様は写真家に憧れ、カナダへの留学を決めたのだった。
「慧吾様は、いつご帰国されるんですか?」
静恵さんがそう訊くと、旦那様が「今日だと聞いているが、何時かまでは聞かなかったなぁ。」と答えた。
慧吾様、今日ご帰国されるんだ。
久しぶりの再会、何だかドキドキしてしまう。
そう思いながら、わたしはバスルームへ向かうと、洗い終わった白いベッドシーツを洗濯カゴに入れ、そのカゴを抱えて裏口から外へと出た。
太陽の光が眩しく、4月のそよ風が頬を撫でる。
今日は洗濯日和だなぁ。
そう思いながら、物干し竿にシーツを干している時だった。
「鈴?」
わたしは「えっ?」と名前を呼ばれた方を向いた。
すると、そこには白いシャツに艷やかな黒髪が靡く、爽やかな青年が立っていたのだ。