Music of Frontier
俺は鉛筆の削りクズを片付けて、ようやくベッドに入った。

…あぁ。なんかもう馬鹿馬鹿しくなってくるなぁ。

明日はどんな馬鹿げた嫌がらせをされるんだろうなと思うと、溜め息の一つや二つは自然に出るというもの。

しかも俺は、あと何年もこれに耐えなければならないのだ。

何で言いなりになっているのか。先生とか寮母さんに言い付ければ良いじゃん、と。

普通の学校の子なら、首を傾げてそう言うだろう。

俺だって、そんな安直な方法で問題が解決するならそうしてる。

でも無理なのだ。この学校は…普通ではないから。

古臭い縦社会の帝国騎士官学校では、前も言ったように、先輩や先生の言うことは絶対。

逆らうようなことを言えば、怒られるのはむしろ俺の方だ。

それに、俺ほど酷いのは珍しいと思うが、何処の部屋でも先輩から後輩へのイビり行為は、往々にして行われていることだ。

イーリアのところはレアケースだろう。同室の先輩と仲良しなんて話、そんなに聞かない。

姉だって…学生時代は、少なからず寮で嫌な思いをしたことがあったらしい。

まぁ、俺ほど酷かったかは定かではないが。

教師や寮母に訴えても無駄だ。先生に訴えても、寮内でのことは寮母に言え、と言われるだけ。

寮母に言えば、今度は室内のリーダーである室長に言え、とたらい回しにされるだけ。

その室長にイビられてるんだよ。俺は。

そもそも学校の大人達は皆、「下級生が上級生にイビられるのは当たり前のこと」と思っている。ある種の通過儀礼のようなものであり、それくらいで騒ぐのは根性なしだ、と。

そのイビりがどれくらい酷いのかは、考えもしない。

だから大人達は味方にはなってくれない。文句を言う宛もない。

俺の場合…友人であるエミスキーやラトベルが愚痴らせてくれるから…それだけでも充分と納得するしかない。

寮でもこの状態で、お前に学校でも針のむしろだったら…俺、居場所がないもんな。

そして何より辛いのは、ルクシーに手紙を書けないことだった。

手紙は原則室長を通して出すことになっており、うちの室長は学校の勉強より俺をイビることに精を出しているような人なので、手紙をちゃんと出してくれるはずがない。

俺の手紙を笑いながら読み上げて、屑籠にポイっと捨てるのが関の山。

送られてきた手紙も同じ。室長を通して渡されるから、ルクシーが手紙を書いてくれても、俺の手元に届くことはない。

あんまり寂しいから、ルクシーにはもう「手紙を書かないでくれ」と言った。

折角書いてくれたものが、届きもせずに捨てられるだけなんてルクシーに失礼過ぎる。

一番の親友と連絡が取れなくなったことは、俺にとってとても辛いことだった。
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