Music of Frontier
「どんなに謝られたって、俺はあなた達のことを許す気にはなれません。イーリアのことも、ルームメイトのことも」

「…」

二人共、傷ついたような顔をして押し黙った。

…別に、エミスキーとラトベルにいじめられた訳じゃない。

殴られたこともないし、面と向かって悪口言われた訳でもない。

謝ってるんだから許してやれば良いのに、と思われるかもしれない。

でも、俺には出来なかった。

「…結局、友人だと思っていたのは俺だけだったってことですよね」

「そんな…ことは…!」

「だってそうでしょ?あなた達には…俺の味方をする気なんてなかったんだから」

自分の立場が不利になるくらいなら、俺のことなんか切り捨てた方が良いと判断したのだ。

その判断自体は間違っちゃいない。彼らにも、彼らの立場があったのだ。

保身に走ることの、何が悪い。

責められるべきは、彼らじゃない。

それは分かってる。二人に悪意がなかったことも分かってる…。

それでも、俺は見捨てられたのだ。

友人だと思っていた人達に。

その事実は、俺の中では永遠に変わらない。なかったことには出来ない。

いかに心が狭いと言われようと。

「…いじめられてるクラスメイトを、助けるどころか、無視して他人の振りをするような人間が…今や正義の帝国騎士だって言うんだから…笑える話ですよね」

「…」

「…良かったですね。今の俺が、ちゃんと幸せになってて…。もし不幸だったら…土下座させても足らなかったと思いますよ」

死ぬほどなじっていただろうね。お前達のせいで!って。

今でこそ、冷静に話も出来るけど…。

「…辛かったんですよ、俺…本当に…」

「…うん。ごめん…」

「ルトリア…あの、俺達に出来ることなら、何でも…」

何でもって、何だよ。

死ねって言ったら死んでくれるのか?

時を戻してくれって言ったら戻してくれるのか?

「今更何されても遅いですよ。あなた達はもう…」

と、言いかけたそのとき。

「…ルトリア?誰なんだそいつらは?」

騒ぎを聞き付けたのか、応接間にルクシーが入ってきた。
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