Music of Frontier
会場をぶらぶらと歩きながら、俺はビュッフェコーナーに向かった。

相変わらず食欲はないし、さっきの頭悪い会話のせいで更に食欲が失せていたが。

後できっと、「何食べたの?美味しかった?」って母に聞かれるだろうから。

とりあえず、何かは食べておこうと思ったのだ。

さすがはマグノリア家の立食パーティー。貧乏人の俺は見たこともないような、趣向を凝らした料理の数々が所狭しと並んでいた。

…美味しいんだろうか?これ。

前菜っぽい料理を皿に取り、恐る恐る口に入れてみる。

…うん。なんかよく分からない。

高級料理って、普段食べつけないせいか、美味しいはずなのに何故か奇妙な味に感じることがあると思うが、今の俺、それだ。

高級過ぎて味が分からない。

…俺の舌が貧乏ってことなんだろうな。

貧乏で結構。

高級ステーキしか美味しいと感じられないより、梅干し乗せたお茶漬け食べて、美味しい、と思える方が人生は幸せだ。

なんていうのも、さっきの子供達にしてみれば負け惜しみなんだろう。

食べつけない妙なものを食べたせいで、余計に食欲が失せた。

俺は皿を片付けて、溜め息混じりに歩き出した。

「…ん?」

顔を上げると、そこはスイーツコーナーだった。

ケーキとかプリンとかアイスクリームなどの、デザートが並んでいる。

そこに、俺と同じくらいの年の男の子がいた。

「…!?」

俺は驚きのあまり、目を見張った。

彼は、同い年くらいの子供の集団には入らず、一人だった。

一人で、大皿を目の前に二つ置いて、そこに山のようにデザートの数々を乗せ、一心不乱にもぐもぐと食べていた。

…それが、ルトリアとの出会いだった。
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