Music of Frontier
ルトリア母曰く、「薄汚いネズミ」と仲良くするようになり、マグノリア家は殺伐としていたに違いないが。

一方我が家では、とても平和で…穏やかな日常が続いていた。

というのも、マグノリア家とは対照的に…うちの母は、俺がルトリアと仲良くするようになったことを喜んでいた。

相手の身分がどうとか言う前に、母は単純に、嬉しかったのだと思う。

今まで、一人の友達もいなかった俺が…同年代の少年と、仲良くしているものだから。

そしてある日、母がこんなことを言い出した。






「ねぇルクシー。今度、ルトリアさんをうちに招待しない?」

「…え…」

ルトリアを…うちに?

「いつも、あなたがマグノリア家にお邪魔してるでしょ?たまにはうちに呼んであげたらどうかしら」

「…それは…」

…どうなんだろう。良いのだろうか、そんなことをしても。

いや、俺は良い。俺は是非とも、ルトリアを自宅に招きたい。

でも…ルトリアは。

ルトリアと言うか、ルトリアの両親は…それを許すだろうか。

自分の息子が、没落しかかった下流貴族の屋敷に遊びに行くなんて。

あのプライドの塊なお母さんが、許してくれるかどうか…。

…限りなく怪しいところだ。

「うちじゃ、マグノリア家のようなおもてなしは出来ないかもしれないけど…。でも、ルクシーと仲良くしてくれてる子だもの。一度顔を見てみたいわ」

母も、俺が懸念していることは分かっているはずだ。

分かっていて…敢えて招待したい、と言ってるんだろう。

…どうするべきかな。

呼びたいところだけど…来てくれるかは別の話。

でも…もし断られたとしても、それは仕方がない。

誘うだけでも、誘ってみよう。

「…今度、誘ってみるよ。来てくれるかは分からないけど…」

「そうね。誘ってみるだけ誘ってみて。母さん…ケーキを焼いて待ってるからって」

それは良い。

ワンチャン、ケーキ目当てに来てくれるかもしれないから。




こうして、俺はルトリアに、「今度はうちに来てみないか」と誘ってみたところ…。





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