佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
随分と昔に感じるその話をし始めた花音ちゃんは、クスッと吹き出した後にケラケラと笑い始めた。
「竜也も可愛い顔で小さかったから顧問の眼中にもコーチの眼中にも入ってなくてね〜。
ミニバスには入ってなかったけど私の彼氏から小学校4年生の頃からめちゃくちゃ教えて貰ってたのに、全然ボールを触る機会を与えて貰えなくて。
それで・・・」
「2人で体育館の裏で遊んでました。」
「練習はサボってたけどバスケはしてたでしょ?」
「そうですね・・・、だって、佐藤先輩と遊ぶバスケットボールは凄く楽しかったから・・・。」
「うん、竜也も晶ちゃんも凄く楽しそうだったな〜。
いつ応援に行っても本当に楽しそうにバスケをしてた。
バスケが楽しくて楽しくて、バスケ以外何もしてないんじゃないかっていうくらいに見えた。」
「うん・・・、そんな感じだったかも。」
「今は?」
汚い桜並木の下、花音ちゃんからまた聞かれる。
「バスケをまたやりたいと思えるくらいの好きはなくなっちゃった?」
それには何も言えなくて・・・。
言葉になんて出来なくて・・・。
この口から声に出すことが凄く”怖い"と思って・・・。
そんな私に花音ちゃんが、言った。
「竜也がね、毎日毎日言ってて。
”女の子なのに俺のプレーをやらせてたから身体がついていけなかったのかもしれない"とか、”俺のせいで膝がダメになったのかもしれない"とか、”晶が高校に入ってからは男女別だし全然気に掛けてあげられなかった"とか、もうね、”え、死んじゃうの?"ってくらいな落ち込み方で毎日毎日ブツブツブツブツ言っててさぁぁぁぁ。」
それを聞き・・・
それを聞いて、私はずっと開けなかった口を開いた。
「凄く・・・・・怖くて・・・・っっ」
口を開いた代わりに足を止めた私に、花音ちゃんは不思議そうな顔で私のことを見た。
「怖いって?」
「・・・・・・・・・・。」
泣きそうになってしまうのを必死に我慢すると、今度はやっぱりこの口が開かなかった。
でも、無理矢理こじ開けてでも自分の口を開く。
「この怪我はバスケをやっている女子には珍しくない怪我だよ・・・。
だから佐藤先輩のせいでは勿論なくて、佐藤先輩が落ち込むことなんて全然ない・・・。
私が復帰を目指せないのは私の弱さの問題だから佐藤先輩は何も関係ないよ・・・。」
それだけは早口で伝えた私に、花音ちゃんは真面目な顔で頷いてくれた。
「竜也に言っておくね。」
「うん・・・・、でも、彼女さんとデートをしてるだろうから、まだ帰ってないと思う。」
「そうなんだ?
あ、もう1つ聞きたいんだけどさ、竜也って何で彼女と付き合ってるの?」
「え・・・・・・・・・、彼女さんから告白されたから・・・・・・・・・?」
「えぇぇぇ、全然分かんない、こういう遊び流行ってるの?」
めちゃくちゃ天然でもある花音ちゃんがまたよく分からないことを言ってきて、今度は私の方が首を傾げる。
そんな私の顔を見詰める花音ちゃんがププッと吹き出した。
「親友とかカレカノとか夫婦は顔まで似てくるとか言うけど、竜也と晶ちゃんの顔もどんどん似てくるよね〜!!!」
「私・・・また男の子っぽくなった?」
「え、そっちじゃないよ!!
竜也が女子なんじゃない!?」
「佐藤先輩はめっちゃ格好良いじゃん!!」
「ねぇ、それはナイってぇぇぇぇ!!!!」
部活が始まる前に女バスのマネージャー達が土屋先生から聞かされた話、その話は佐藤先輩と私が出会ったあの春と同じような場面だった。
あの時はバスケをする為に体育館裏に走った佐藤先輩が、今は新1年生の為に声を挙げたのだと聞き私は凄く”嬉しい"と思った。
”あの春"の私ももっと救われたような気持ちになった。
また、佐藤先輩から助けて貰えたように思えて・・・
そして、もっともっと好きになってしまった。
バスケが”怖い"と思ってしまった私が、佐藤先輩のことをもっともっと好きになって・・・
女バスから離れられたことによるホッとした気持ち以上に、男バスのマネージャーというポジションでも佐藤先輩の傍にまたいられるということが凄く凄く”嬉しい"と思ってしまった・・・。
「竜也も可愛い顔で小さかったから顧問の眼中にもコーチの眼中にも入ってなくてね〜。
ミニバスには入ってなかったけど私の彼氏から小学校4年生の頃からめちゃくちゃ教えて貰ってたのに、全然ボールを触る機会を与えて貰えなくて。
それで・・・」
「2人で体育館の裏で遊んでました。」
「練習はサボってたけどバスケはしてたでしょ?」
「そうですね・・・、だって、佐藤先輩と遊ぶバスケットボールは凄く楽しかったから・・・。」
「うん、竜也も晶ちゃんも凄く楽しそうだったな〜。
いつ応援に行っても本当に楽しそうにバスケをしてた。
バスケが楽しくて楽しくて、バスケ以外何もしてないんじゃないかっていうくらいに見えた。」
「うん・・・、そんな感じだったかも。」
「今は?」
汚い桜並木の下、花音ちゃんからまた聞かれる。
「バスケをまたやりたいと思えるくらいの好きはなくなっちゃった?」
それには何も言えなくて・・・。
言葉になんて出来なくて・・・。
この口から声に出すことが凄く”怖い"と思って・・・。
そんな私に花音ちゃんが、言った。
「竜也がね、毎日毎日言ってて。
”女の子なのに俺のプレーをやらせてたから身体がついていけなかったのかもしれない"とか、”俺のせいで膝がダメになったのかもしれない"とか、”晶が高校に入ってからは男女別だし全然気に掛けてあげられなかった"とか、もうね、”え、死んじゃうの?"ってくらいな落ち込み方で毎日毎日ブツブツブツブツ言っててさぁぁぁぁ。」
それを聞き・・・
それを聞いて、私はずっと開けなかった口を開いた。
「凄く・・・・・怖くて・・・・っっ」
口を開いた代わりに足を止めた私に、花音ちゃんは不思議そうな顔で私のことを見た。
「怖いって?」
「・・・・・・・・・・。」
泣きそうになってしまうのを必死に我慢すると、今度はやっぱりこの口が開かなかった。
でも、無理矢理こじ開けてでも自分の口を開く。
「この怪我はバスケをやっている女子には珍しくない怪我だよ・・・。
だから佐藤先輩のせいでは勿論なくて、佐藤先輩が落ち込むことなんて全然ない・・・。
私が復帰を目指せないのは私の弱さの問題だから佐藤先輩は何も関係ないよ・・・。」
それだけは早口で伝えた私に、花音ちゃんは真面目な顔で頷いてくれた。
「竜也に言っておくね。」
「うん・・・・、でも、彼女さんとデートをしてるだろうから、まだ帰ってないと思う。」
「そうなんだ?
あ、もう1つ聞きたいんだけどさ、竜也って何で彼女と付き合ってるの?」
「え・・・・・・・・・、彼女さんから告白されたから・・・・・・・・・?」
「えぇぇぇ、全然分かんない、こういう遊び流行ってるの?」
めちゃくちゃ天然でもある花音ちゃんがまたよく分からないことを言ってきて、今度は私の方が首を傾げる。
そんな私の顔を見詰める花音ちゃんがププッと吹き出した。
「親友とかカレカノとか夫婦は顔まで似てくるとか言うけど、竜也と晶ちゃんの顔もどんどん似てくるよね〜!!!」
「私・・・また男の子っぽくなった?」
「え、そっちじゃないよ!!
竜也が女子なんじゃない!?」
「佐藤先輩はめっちゃ格好良いじゃん!!」
「ねぇ、それはナイってぇぇぇぇ!!!!」
部活が始まる前に女バスのマネージャー達が土屋先生から聞かされた話、その話は佐藤先輩と私が出会ったあの春と同じような場面だった。
あの時はバスケをする為に体育館裏に走った佐藤先輩が、今は新1年生の為に声を挙げたのだと聞き私は凄く”嬉しい"と思った。
”あの春"の私ももっと救われたような気持ちになった。
また、佐藤先輩から助けて貰えたように思えて・・・
そして、もっともっと好きになってしまった。
バスケが”怖い"と思ってしまった私が、佐藤先輩のことをもっともっと好きになって・・・
女バスから離れられたことによるホッとした気持ち以上に、男バスのマネージャーというポジションでも佐藤先輩の傍にまたいられるということが凄く凄く”嬉しい"と思ってしまった・・・。