佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
佐藤先輩のドリブルの音に引き寄せられるように、私は高速道路の下にあるバスケットコートのフェンスの所まで歩いた。



沢山の車が走っていく中にある暗くて細長いバスケットコート。
まだ空は青いのに、このバスケットコートは真っ暗に見える。



いつも真っ暗だとしてもあんなに明るく輝いて見えていたのに、今はこんなにも真っ暗に見える。



そんなバスケットコートの中で佐藤先輩はドリブルをしていて・・・



そして、シュートは外していた。



何度も何度もドリブルをして、シュートをして、何度も何度もそれを繰り返して・・・



繰り返して・・・・



狂ったように、繰り返して・・・。



それでも、シュートは1本も入ることはなかった。



そんな佐藤先輩の姿を私は眺め続ける。



何も浮かばない、何も考えられない頭で・・・。



どのくらいの時間が経ったかなんて分からない。



凄く長いようにも思うし凄く短いようにも感じる。



よく分からない時間の中で佐藤先輩のことを眺め続けていた時・・・



フッと――――――――――·······佐藤先輩が私の方を見た。



佐藤先輩はロンTのお腹の部分を捲り上げ、そこで顔を拭いた。
男バスのマネージャーになってから初めて知ったけれど、男子部員がよくやるソレ。
でも佐藤先輩は1度もやったことがなかったソレにはドキッとした。



他の男バス部員のよく割れて盛り上がったお腹を見るよりも、白くて少ししか割れていない細くて薄い佐藤先輩のお腹の方が私のことをこんなにもドキドキとさせた。



こんなにも、全身を熱くさせた・・・。



昨日の佐藤先輩の姿を思い出してしまいながら、何も言えない私は佐藤先輩のことを眺め続ける。



私に何も声を掛けてくれない佐藤先輩の姿を・・・。



バスケットボールを片手で持ち、佐藤先輩も長い時間私のことを眺め続けた。



お互いに無言で見詰め合う。



結構離れた所から無言で見詰め合う。



そして・・・



先に口を開いたのは佐藤先輩だった。



「晶・・・・・・・。」



こんなに車の音が聞こえているのに、佐藤先輩の声は私の所まで聞こえた。



ちゃんと聞こえた。



こんなに、聞こえて・・・



私の足は勝手に動き出し・・・



佐藤先輩がいるバスケットコートの中へと足を踏み入れた、その時・・・



「うわっっっ・・・、え!!?晶!!?」



佐藤先輩が凄く凄く驚いた顔と声を出して私の方にドリブルで向かってきた。



それには首を傾げると・・・



「ビッッッックリした!!!
晶のことを考え過ぎて、晶に会いた過ぎて、遂に幻覚の晶まで見える魔法まで身につけた!!!と思いながら名前を呼んだら本物だった!!!!」



こっちがビッッッックリするそんな言葉には、思わず吹き出してしまった。
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