佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
「・・・・・・・・っっっ」



「泣いてても良いけど、ちゃんと見ててね。」



佐藤先輩がゆっくりとドリブルをしながらゴールを見詰める。



「はい・・・。」



「少し助走はつけていい?」



「それは分かってます。」



「うん、そうだよね。」



佐藤先輩のドリブルがこのバスケットコートの中で響いていく。



体育館の床でもない。



ボールには砂もついている。



細長いコートはゴールまでの距離の感覚を狂わせる。



周りを走っている沢山の車の音が急かしているように聞こえる。



薄暗い中にあるゴールは、こんなにもボヤケて見える。



それでも・・・



佐藤先輩の横顔から見える目は諦めていない。



しっかりと前を向いて、凄く強い目でゴールを見詰めている。



凄く凄く強い目で・・・



凄く凄く・・・もう、めっちゃ格好良い横顔で・・・



"やっぱり、私は佐藤先輩から離れられない。
どうしよう、離れたくない・・・っ。”



そう思ってしまう横顔で・・・。



そんな顔をしている佐藤先輩がドリブルをしながら前に進んだ。



そして、1歩・・・



2歩、助走をつけて・・・



投げた・・・。



いや、シュートをした。



だって、見える。



"見えた。”



このシュートがあのゴールに入る所が、確かに"見えた”。



"嘘。”



そう思った瞬間・・・



佐藤先輩が叫んだ。



大きな大きな声で・・・



























「俺は晶のことを女の子として愛してます!!!!!」















あんなにうるさかったはずの車の音が消える。



あんなに走っていたはずの車が全て止まった。



なのに、佐藤先輩のバスケットボールだけは動き続ける。



ゴールに向かって、その軌道を綺麗に描きながら動き続ける。



あんなに暗かったはずなのに、明るくなった。



めちゃくちゃ明るくなった。



このバスケットコートにまるで太陽の光りが差し込んだかのように、眩しいくらいに明るくなって・・・・・



入った・・・・・。



入った・・・・・・・・・。



私の所まで響く、綺麗な音で入った・・・。



もう左膝は痛くないはずなのに、その場に崩れ落ちてしまったほどの綺麗なシュートが、私の心に入った・・・。



佐藤先輩は星野君よりも凄い魔法を、使った・・・。



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