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まあでも、入りたくて入れるような場所じゃないしね?S専って。特殊能力を与えられた者の宿命的な?人の役に立てて、お金も稼げるなら悪くはないか……ただそれだけの感情で今あたしはここにいる。 

「あー、だるっ」

あたしは生まれつき“自己治癒力”が桁違いに高かった。ちょっとした擦り傷や切り傷なら一瞬で治ってしまう。骨折程度なら2日もあれば完全に治るし、致命傷さえ受けなければ、どんな大怪我でも大概は数日で完治する。そんな特異体質なあたしは、この治癒力を“他人に分け与える”ことができる特殊能力持ち。

分け与える方法は至ってシンプル。能力を発動して、治癒力を分け与えたい相手に“触れる”だけ。軽傷ならすぐに治るし、軽傷じゃなかった場合は応急措置程度にはなる。そして、なにより治癒力を底上げするのは ──あたしの“体液”。色んな検査や分析を経て、あたしの体液自体に治癒効果があると判明。あたしは唾液にすら高い治癒力があるらしい。いや、怪我人に唾液を垂らすとかさ、さすがに無理じゃん?ていうか、唾液を人に垂らす女とかもうヤバいじゃん?だからあたしは、最も治癒力が高いと言われてる“血液”を分け与えることにしてるってわけ。

これまた方法は至ってシンプル。指先をスッと切って、流れてくる血を分け与えたい相手の体内に入れるだけ。どうやらあたしの血液は甘いらしく、この能力を把握してる人達はなんの抵抗もなく口に含む。

あたしはそれを見て毎回ドン引きしてる。あたしの血が上手いこと保存できればこんな気持ち悪いことしなくても済むんだけど、どうやら新鮮な血液じゃないとダメらしい。今のところ保存した血液に治癒力はない。
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