その手で触れて、そして覚えて。

「今、乾燥機かけてるから!何か羽織る?寒くない?」
「俺は大丈夫です。それより、七花主任。ここ座ってください。」

ソファーに腰を掛けている街風くんは、自分の目の前を指差した。

「えっ?ここ?」

わたしは戸惑いながらも、街風くんの言われた通り、ソファーに足を開いて座る街風くんの目の前に座った。

え?これはどうゆう状況?

そう思っていると、街風くんが「ちょっと失礼しますね。」と言い、わたしの肩に触れた。

最初は何が起こったのかと驚いたが、街風くんはわたしの肩揉みを始めてくれたのだ。

「うわっ、やっぱり七花主任、肩凝ってますね。」
「やっぱりぃ?最近、頭痛することがあってさ。肩凝りのせいだとは思ってたんだぁ。それより街風くん、マッサージ上手だね。」
「うちの親父が整体師で、小さい頃から親父の真似事で母の肩を揉んでいたら、いつの間にか何と無く分かるようになってきて。」

街風くんは、凝っている箇所を的確に押してきて、力加減も丁度よく、それがまた心地よかった。

「街風くんって何でも出来るんだね。料理も出来るし、マッサージも上手だし。仕事の覚えも早いから、そろそろ一人で仕事任せようかと思ってるんだぁ。」

わたしがそう言うと、街風くんは「えっ。」と肩を揉む手を止めた。

「もう、一人でですか?俺はまだ、、、七花主任に教えてもらっていたかったんですけど、、、」

寂しそうな口調でそう言う街風くん。

街風くん、、、それは、どうゆう意味で言ってくれているの?

一人だと、まだ不安ってこと?
それとも、、、まだわたしと、、、って、そんなわけない!

違う違う!一人だと不安だって事だよね!

すると、フワッと街風くんのニオイが香ったと思えば、わたしはいつの間にか街風くんの腕の中に居た。

えっ?何?街風くん?

< 18 / 67 >

この作品をシェア

pagetop