その手で触れて、そして覚えて。
「七花、もっと素直になりなよ。もちろん、前の結婚でのトラウマもあるのかもしれないけど、わたしは街風くんなら七花を任せられる。」
「任せられるって、、、」
「だって、こないだみんなの前で七花の事、庇ってくれたじゃない!自分が一番下っ端なの分かってて、自分の思ってることをあんな真っ直ぐに言える子なんて、そうそう居ないよ?」
確かにそうだ。
下手したら、あの一件で"生意気"だと街風くんは周りから避けられてもおかしくない存在になる可能性はあったのに、、、
それなのに、わたしに不快な思いをさせたくないからと、庇ってくれた。
そんな街風くんの気持ちを、わたしは避けようとしていたんだ、、、
わたしは紗和に背中を押され、もっと自分の気持ちに正直になってみる努力をしようと思った。
わたしは紙コップに淹れた珈琲をホルダーに入れ、事務所に戻った。
そして、資料作成を再開する。
紗和のおかげで気持ちが少し軽くなり、モヤモヤもなくなった。
わたしが見えている壁は、壁に見えてるだけで壁じゃない。
わたしは資料作成を進めていき、気が付けば定時を回っていた。
「あれ。七花、残業?」
退勤しようとしている紗和に声を掛けられる。
「うん、これ終わらせてから帰る。」
「あんまり無理すんじゃないよ?じゃあ、お先に!お疲れ様!」
「お疲れ様!」
紗和が退勤していくと、次々と周りのみんなは「お疲れ様でした!」と退勤していく。
すると、「七花主任、残業ですか?」と声を掛けてくるその声にハッとした。
横を見上げると、そこには街風くんが立っていて「俺、手伝いますよ。」と言ってくれた。