その手で触れて、そして覚えて。
居酒屋を゙出ると、モワッとした空気から解放され、外の空気がスッキリと感じられた。
「わぁ!今日、雲ないから空が綺麗に見える!」
夜空を見上げると、雲がなく澄んでいて星がチラホラ見えた。
しかし、5月の札幌の夜はまだ肌寒く、わたしはコートを羽織ると自分の腕を前で組むようにして少しでも寒さを防ごうとした。
「少し肌寒いですね。タクシー拾って来ます。」
「あ、大丈夫!わたしの家、ここから歩いて帰れる距離にあるから。それに、せっかく空も綺麗だし。」
そう言って、わたしと街風くんは夜空の下を歩き始めた。
「街風くん、仕事の方はどう?困ってることない?」
「はい、七花主任が丁寧に教えてくれるので、大丈夫です。」
「本当?無理して褒めなくていいんだよ?」
「本当です。俺、配属先が総務課で良かったと思ってるんで。」
街風くんはそう言うと、微かに微笑んだ。
「そう?そう思ってくれてるなら嬉しいよ。」
「、、、あのぉ、聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「ん?何?」
「仕事の話ではないんですけど、、、七花主任って、お付き合いしてる人、いますか?」
予想外の質問に一瞬戸惑ったが、わたしは「居ないよ!」と答えた。
「街風くんは?彼女いるんでしょ?居ないわけないよね〜」
「いえ、居ないですよ?」
ハッキリと否定した街風くんの言葉に、わたしは決めつけて発言してしまったことを反省し、「ごめん!勝手に決めつけて、、、」と謝った。