その手で触れて、そして覚えて。
「七花主任、どうしたんですか?気分でも悪いんですか?」
「あー、大丈夫大丈夫!ちょっと疲れちゃっただけだから。わたし大勢が苦手でお酒もあんまり飲めないから、休憩中。すぐ戻るから。」
わたしがそう言うと、街風くんは申し訳なさそうな表情を浮かべ「すみません、、、僕の歓迎会のせいで。」と言った。
「いやいや!街風くんが謝ることじゃないから!わたしがただ情けないだけ。ごめんね、心配かけちゃって。」
「無理しなくていいですよ。七花主任は帰った方がいいですよ。僕、送りますから。」
「いや!街風くんが主役なのに!主役が居なくなっちゃダメでしょ!」
「七花主任には、いつもお世話になっているので、これくらいさせてください。僕、帰る支度して来ます。」
「え?!ちょ、ちょっと!街風くん!」
街風くんはわたしの呼び掛けに反応せず、戻って行ってしまった。
え?街風くんが居なくなったら、歓迎会の意味なくなっちゃうのに、、、
それに街風くんが帰るなんて言ったら、他の女性社員たちが黙ってないんじゃ、、、?
すると、街風くんは帰る支度をした上に、わたしのコートとバッグまで持って、わたしのところに戻って来た。
「七花主任のコートとバッグ、これで合ってますよね?」
「あぁ、うん。ありがとう。よく、あの場から抜けて来られたね。」
わたしがコートとバッグを受け取りながらそう言うと、街風くんは「まぁ、何とか。七花主任に無理はさせたくないし、、、一人で帰すわけにはいかないんで。」と言った。
「わたしは一人で大丈夫だよ?」
「いえ、女性一人でこんな遅い時間に帰るのは危ないです。」
「わたしなんて36歳のおばさんなんだから、全然平気なのに。」
わたしが笑ってそう言うと、街風くんは真剣な表情で「七花主任はおばさんなんかじゃないです。それに、、、綺麗だから、心配なので。」と言ってくれたのだ。