その手で触れて、そして覚えて。
そして、お互いの郵便ポストを確認しながら、冬司が「あれが噂のモテ男くん?」と訊いてきた。
「街風くんね。」
「確かにあれはモテるわな。俺が太鼓判押してやる。」
「冬司に太鼓判押されてもねぇ。」
そう言いながら、わたしたちはエレベーターへと向かう。
エレベーターは丁度1階で止まっており、すぐに乗ることが出来た。
「まぁ、俺の方がイケメンだけどな。」
「また始まった。」
そして、わたしは6階、冬司は8階のボタンを押した。
「七花は、もう再婚とか考えてないの?」
「ないね。」
「俺ら、まだ36だよ?独り者同士、一緒に居るのは、」
「なしだね!」
「おい、人の言葉を遮るなよ。」
「だって、いつも同じ事しか言わないでしょ?」
「俺はアリだと思うんだけどなぁ〜。」
冬司はいつも同じ事ばかり言う。
でも、わたしは真に受けていない。
すると、6階に到着し、わたしはエレベーターから降りた。
「七花、おやすみ。」
「おやすみ。」
エレベーターのドアが閉まり、わざとらしくキザに微笑む冬司を見送ってから、私は自分の家に帰宅した。