契約の愛で結ばれたのは、まさかの敏腕CEO!?~独占欲滾るスパダリは極上溺愛で囲い離さない~
 手紙を持つ手がカタカタと震える。
 そこには新聞記事から切り取られた文字が綴られていた。

『あばずれ』
『つけあがるな!』
『クソ女』
『矯正してやる』

 花柄の便箋に不釣り合いな言葉が並んでいる。

 茉莉花は震える手で手紙をカバンに押し込むと、足早にロッカーを後にした。

(変なことをしているのは会社の人なの……?)

 そう思うと社内を前を向いて歩けなかった。



 その上――。

「おい、ぼさっとしてんなよ。邪魔」
「あっ、檜山さん……お疲れ様です」

 檜山とばったり会ってしまう始末。
 茉莉花は会釈をして通り過ぎようとした。
 すると檜山は、茉莉花の前に立ちふさがった。

「俺と付き合いたくなっただろう?」

 檜山の言葉の意味が分からず、思わず「はぁ?」と声が出る。

「皆からヒソヒソされて困っているだろう? 今、俺に『付き合ってください』と頭を下げれば、噂を全部消してやるよ」

 ニヤニヤと笑みを浮かべた檜山に、ふつふつと怒りが湧き上がる。

(今は檜山さんの戯言に付き合ってる場合じゃないのに!)

「結構です。噂なんてどうでもいいので。ここには仕事をしに来ているだけですし」

 茉莉花が檜山をじっと見つめて静かに返すと、彼は少したじろいだ。

「なっ……!」
「急ぎますので、失礼します」
「おい、待てよ!」

 腕を掴まれた茉莉花は、それを強く振り払う。

「檜山さん、こんな所を他の方が見たら『誤解』されてしまいますよ?」
「……」

 檜山の腕の力が緩まった隙に、茉莉花はその場を立ち去った。


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