遣らずの雨 下
私が前を向けた場所で出会えた
素でいさせてくれる凪の存在は
もう誰にも超えられない‥‥‥
こんな思いを知るくらいなら、
帰ってくるんじゃなかった‥‥
『(‥‥皐月、泣くなら帰ってきて
からにしろ。俺がいないところで
泣くな‥‥分かった?)』
「ッ‥‥‥ん‥‥そうするッ‥」
両目に溜まった涙をハンカチで
押さえると、震える声で凪にそう伝え、
新幹線に急いで乗った。
大好きだった人の笑顔が見れたまま
前に進んでいたと思っていたのに、
あんなツラそうな顔、見たくなかった‥
会いたかった‥‥
酒向さんの言葉に
窓から見える景色が何度も滲み、
凪に会いたい気持ちが加速する
あのまま名古屋を離れず、紫乃さんが
落ち着くまで待てば良かったの?
そしたら私は今、酒向さんの隣で
笑っていられたのかな‥‥
でもそしたら凪には出会う人生は
訪れなかった‥‥
それは‥絶対に嫌だ‥‥‥
静岡に到着すると、改札口を通り抜けた
先に待つ凪の姿を見つけ、堪えていた
涙が溢れると、そのまま抱きついた
「ッ‥‥ただいま。」
安心する凪の香りと、背中に回された
腕の愛しさに涙が止まらない
『フッ‥‥‥家に帰るぞ。』
「ん‥‥帰りたい。」
スーツケースを凪に取られると、
大きな手に私の手が包まれ、その
温かさにまた涙が頬に流れた
私はもうこの手を離したくない‥‥
凪の車に乗る間も、凪は何も
聞かないでいてくれた。
帰省した私が、こんな状態で帰って
来たら不安になるはずなのに、信号が
赤になる度に頭を撫でてくれたり、
右手を握ってくれるだけ。
その凪の優しさが私にはとても
嬉しかったのだ‥‥
『おい‥‥今日はこっちだろ?』
えっ?
工房の鍵を開けようとする私の手から
鍵をスッと奪われると、そのまま荷物は
凪の手に持たれ、もう片方の手は私の
手をしっかりと握った
「凪‥‥私大丈夫だよ?」
『‥‥‥‥入って。』
ガチャ
スーツケースを中に入れ、扉を開けたままの凪が首を傾げるように中に入れと
促すから、中に入った。
ドンっ
ビクッ
ドアを閉めた凪がいきなり私の後ろの壁
に両手を当てその中に私を閉じ込めた
ことに驚き体がビクッと跳ねる。
「凪?」
『お前が大丈夫でも、あんなに
泣きながら電話をかけてきたら
俺が大丈夫じゃない‥‥‥。
心配したに決まってるだろ‥‥。』
凪‥‥‥
ツラそうな表情で私を見下ろす凪の
頬を両手で包むと、背伸びをして
自分から凪の唇にキスをした。
素でいさせてくれる凪の存在は
もう誰にも超えられない‥‥‥
こんな思いを知るくらいなら、
帰ってくるんじゃなかった‥‥
『(‥‥皐月、泣くなら帰ってきて
からにしろ。俺がいないところで
泣くな‥‥分かった?)』
「ッ‥‥‥ん‥‥そうするッ‥」
両目に溜まった涙をハンカチで
押さえると、震える声で凪にそう伝え、
新幹線に急いで乗った。
大好きだった人の笑顔が見れたまま
前に進んでいたと思っていたのに、
あんなツラそうな顔、見たくなかった‥
会いたかった‥‥
酒向さんの言葉に
窓から見える景色が何度も滲み、
凪に会いたい気持ちが加速する
あのまま名古屋を離れず、紫乃さんが
落ち着くまで待てば良かったの?
そしたら私は今、酒向さんの隣で
笑っていられたのかな‥‥
でもそしたら凪には出会う人生は
訪れなかった‥‥
それは‥絶対に嫌だ‥‥‥
静岡に到着すると、改札口を通り抜けた
先に待つ凪の姿を見つけ、堪えていた
涙が溢れると、そのまま抱きついた
「ッ‥‥ただいま。」
安心する凪の香りと、背中に回された
腕の愛しさに涙が止まらない
『フッ‥‥‥家に帰るぞ。』
「ん‥‥帰りたい。」
スーツケースを凪に取られると、
大きな手に私の手が包まれ、その
温かさにまた涙が頬に流れた
私はもうこの手を離したくない‥‥
凪の車に乗る間も、凪は何も
聞かないでいてくれた。
帰省した私が、こんな状態で帰って
来たら不安になるはずなのに、信号が
赤になる度に頭を撫でてくれたり、
右手を握ってくれるだけ。
その凪の優しさが私にはとても
嬉しかったのだ‥‥
『おい‥‥今日はこっちだろ?』
えっ?
工房の鍵を開けようとする私の手から
鍵をスッと奪われると、そのまま荷物は
凪の手に持たれ、もう片方の手は私の
手をしっかりと握った
「凪‥‥私大丈夫だよ?」
『‥‥‥‥入って。』
ガチャ
スーツケースを中に入れ、扉を開けたままの凪が首を傾げるように中に入れと
促すから、中に入った。
ドンっ
ビクッ
ドアを閉めた凪がいきなり私の後ろの壁
に両手を当てその中に私を閉じ込めた
ことに驚き体がビクッと跳ねる。
「凪?」
『お前が大丈夫でも、あんなに
泣きながら電話をかけてきたら
俺が大丈夫じゃない‥‥‥。
心配したに決まってるだろ‥‥。』
凪‥‥‥
ツラそうな表情で私を見下ろす凪の
頬を両手で包むと、背伸びをして
自分から凪の唇にキスをした。