俺様同期の執着愛
 私は呆気にとられてしまった。
 柚葵は遠慮してそんなことを言ったんだ。
 反応に困った私はぼそりと呟く。

「……俺様?」
「うるせえ」
「気にしないで。私がお見舞いに来たかったの」
「そっか」

 柚葵は照れくさそうにしながら目線をよそにやった。
 もしかしたら柚葵も素直じゃないのかもしれない。私も人のことは言えないけれど。
 でも、昨日の彼は素直だったと思う。
 たとえ本人が覚えていなくても、私だけは覚えておこうと思った。

「じゃあ、今日もちゃんと寝て治してよ」
「ああ、メシもありがとう」

 私は晩ごはんにサラダと生姜焼きを作っておいた。

「味噌汁はインスタントでよろしく」
「おう、さんきゅー」

 柚葵は玄関でひらひらと手を振って見送ってくれた。
 彼のマンションを出てから電車に乗り、それからバスに乗り換えて自宅アパートへと帰る。
 車内は通勤時間には考えられないほど空いている。

 やっぱりなんか、引っ越したいなって思った。
 もし柚葵のマンションで暮らせたら会社まで近いし、遅くまで寝ていられるのになあって。

 柚葵とルームシェアするのってどうだろう?
 嫌がるかなあ?

 もし柚葵に彼女ができたときにまた引っ越さなきゃいけなくなるし、現実的には無理だなと思った。
 だけど、柚葵に彼女ができるなんて。

 なんか、やだなあって思ってしまった。

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