俺様同期の執着愛
 その日、同期の女子ふたりとランチをしているときに、ふと訊かれた。

「ねえねえ、最近彼氏できた?」
「あたしも思った。綾、綺麗になったよね」

 私はどう答えたらいいかわからなかった。
 彼女たちとは部署も違うし、私に彼氏がいたことを知っている人はほとんどいない。恭一さんに口止めされていたから誰にも言っていない。

「そうかな? ありがと。でも、いないよ」

 今いないことは事実だからそう答えた。

「そういえば知ってる? 武本さん」

 ひとりの子がふいにその名を口にして、どきりとした。

「誰?」
「武本恭一さんよ。〇△システムの。よく出入りしてるじゃない」
「あー、どうしたの?」
「この前、うちの後輩が声かけられたんだって。彼氏いるから断ったらしいんだけど、結構しつこくて困ってたみたいよ」
「そうなんだ」

 私はふたりの話を聞きながら、何も言えずにただ頷くことしかできなかった。

 恭一さん、まだそんなことしてるんだ。

「それがね、なんと薔薇を渡してきたみたいよ」
「えー? 何それ、引く。付き合ってもないのに?」

 私はますます何も言えず、この話題が終わるまで引きつった笑顔をどうにか保つしかなかった。
 そんなとき、私たちの背後から声がした。

「お前ら、暇だねー。もっと他に話すことないのかよ」

 すっかり快復した柚葵が缶コーヒーを手に持って立っていた。

「何よ、柚葵。失礼ねー」
「そういえば熱出してたんだっけ? らしくないね。大丈夫?」
 
 ふたりの言葉に柚葵は「うるせぇよ」といつもみたいな口ぶりで言って、さっさと立ち去ってしまった。

 もしかして、助けてくれた――?

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