俺様同期の執着愛
 どうしようこの状況。
 でも、とりあえず山本さんには丁寧に断りを入れよう。

「すみません。ちょっと用事ができたので私はこれで失礼します」
「え? せっかくだから、上のバーに一緒に行こうかと思っていたのに」
「ええっと……」

 どう返そうかと思っていると、いきなり柚葵が私の肩を掴んだ。
 そして、彼に抱き寄せられてしまった。
 驚いたのは私だけじゃなくて、目の前の山本さんも目を丸くしていた。

「……ゆ、ず」
「すいません。こいつ、俺のなんで」

 い、今なんて言った!?

「ふたりだけで飲みに行かれると困りますね」

 落ち着いた口調で淡々と告げる柚葵。
 放心状態の山本さん、と私。

「え……君はえっと、加賀美くんだっけ?」
「はい」
「ふたりは、その……そういう」

 そうか。これは私を助けてくれるための演技なんだ。
 よし、私もそれに合わせよう。

「そうなんです。実は私たち、こういう関係なんです。でも社内で内緒にしているので、言わないでくださいね」

 私は柚葵の腕にしがみついて、努めて明るくそう言ってみた。
 山本さんが呆気にとられて口ごもると、柚葵はにやあっと笑って彼に言った。

「じゃ、これからふたりで抜け出すんで、くれぐれも内密にお願いします」
「あ……はい」

 山本さんは目を丸くしたまま小さく頷いた。

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