俺様同期の執着愛
 さて、どうするか。
 綾芽に一刻も早くあんなクソ野郎のことを忘れさせてやりたい。しかし奴がマッチングアプリでパパ活をしているなどと知ったらさらに綾芽はショックを受けるだろう。
 なるべく彼女が傷つかないように忘れさせてやりたい。
 そのためには、俺の存在を綾芽の中で確固たるものにするしかない。

「一輪の薔薇とか……」

 武本恭一から一輪の薔薇で告白されて付き合ったと綾芽から聞いたときにはドン引きしたが、俺もその手を使ってみようかなと今ガラにもないことを考えている。

 一輪の、薔薇とか……。
 うわっ、似合わねえっ!!
 薔薇を送るくらいならサッカーの観戦チケット送ったほうがマシ。


『ありがとう、柚葵。私これ行きたかったんだあ』

 チケットを贈ったときの綾芽の姿を想像したら、脳内で彼女の笑顔が炸裂した。そうだ。綾芽の警戒心を解くために趣味を利用すればいいだけの話。そしてその流れで彼女を取り込んで完全に心が掴めたと確信したときに告白だ。

 そこまでおめでたい想像をしたあと、ガラにもなく薔薇の花を贈ろうとした自分に恥ずかしくなった。

 ないない。花束とか、絶対ないな!!!

 ふと顔を上げるとちょうど駅の出口から遠目に小さな花屋が見えた。いつもならまったく気にならない日常風景のひとつだ。

 何も考えずにそっちへ足が向いて、花屋の前に立つ。
 closeの看板に目をやってから、ドアに書かれた開店時間を確認した。

 ふーん。10時から19時か……。
 別に俺には関係ない……ない。

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