俺様同期の執着愛
「待って。待ってくれよ、綾芽(あやめ)

 慌てて立ち上がり手を伸ばしてくる彼を振り払って私は伝票を手に持った。

「何ですか? 奢られたくないので私が払います」
「違う。ちゃんと話し合おう」
「話すことはありません。別れてください。以上です」
「綾芽!」

 私はもう周囲の視線などまったく気にならなかった。

 支払いを済ませて店の外に出るとさっさと自分の車に乗って帰ろうと思った。そうしたら彼が追いかけてきた。
 私の車の助手席の窓をコンコンしながら訴えてくる。
 私が窓を開けると彼は必死に懇願した。

「最寄り駅まで送ってくれないか? 実は今日車を妻に取られてね」
「は?」

 すっごい意味わかんない。
 しかも今、妻って言ったよね?
 別れたのに元妻じゃなくて妻って!!

「ここへ来るときはバスを使いましたよね? 帰りもそれでどうぞ」

 ここで車に乗せてしまうと無理やりキスでもされるかもしれないと思って絶対に乗せるもんかと思った。
 なぜなら前科があるからだ。彼は言葉巧みに私を誘い、そのまま行為になだれ込む。
 今考えるとものすごく気持ち悪くなってきた。

 私は彼をその場に置いて帰宅した。
 ちょっと冷たい対応かなと思ったけど、それくらい私の心はぐちゃぐちゃで、平静を保つことで精いっぱいだったのだ。

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