好きって言ってよ ~先輩、溺愛しすぎですっ~
「おかえりー…って…どなた?」



リビングにいたのは先輩のお父さん? かな?



若いお父さんだ。



かっこいいっていうよりはかわいい寄りかな。



目元が風里先輩に似てる。



「俺の彼女だよ。事情があって家にまだ帰れないからしばらく俺の家で時間つぶしなって言って呼んだの」



先輩が紹介してくれる。



あたしは深くお辞儀した。



「風里先輩とお付き合いしてます、鶴巻小糸です! 夜遅くに突然すみません!」

「え~! 風里の彼女さん! はじめまして~、父です。ゆっくりしてってね」



お父さんが嬉しそうにあたしに笑顔を向けてくれた。



なんか喋り方も先輩と似てるかも…!



すごく優しそうなお父さん。



「母さんは?」

「いまお風呂入ってるよ。もう上がると思うけど」



言ってる間に、廊下からお風呂上がりのお母さんが入ってきた。



そしてあたしを見て「あれっ、この前の子?」と聞いてきた。



「ただいま。俺の彼女だよ。小糸ちゃん」

「先日はお世話になりました! ちゃんと挨拶できずにすみません!」



あたしがこれまた深くお辞儀をすると、お母さんは「え~! 彼女なのー!」と楽しそうな声を出した。



「なんで教えてくれないのよ」

「いやわざわざ母親に言わないでしょ…。付き合ったのも最近だしさ」



風里先輩の言葉に、ケラケラと笑うお母さん。



この前はあんまり話さなかったけど、明るくて良いお母さんだ。



「小糸ちゃん、風里と付き合ってくれてありがとうね~」



お母さんがそう言って笑った。



「こちらこそです! 風里先輩産んでくれてありがとうございます…」

「あはは、どういたしまして」



それからお母さんは、お父さんに「はい」とドライヤーを渡した。



当然のように受け取るお父さんは、それからお母さんの髪を乾かし始めた。



仲良し夫婦だ…。



風里先輩が「俺の部屋行こう」と言ってあたしの手を引いてくれた。



ドキドキ…。
< 56 / 351 >

この作品をシェア

pagetop