雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「奈緒、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ごめん。あまりにも嬉しくて、涙が溢れ出しちゃった…」

「それならよかった。いきなり涙を流したからびっくりしちゃって…」

確かにいきなり涙を流されたら驚かない方がおかしい。

「驚かせちゃってごめんね。いきなり泣いちゃって…」

「いいよ。泣いた理由を聞いたら、嬉しかったから」

そう言われると、今度はこちらの方が恥ずかしくなってしまった。

「それならよかったです…」

「でも涙より笑顔が見たいから、これからはたくさん笑い合える時間を築いていこうね」

笑顔が溢れる、幸せいっぱいの家庭を築き上げていけたらいいな。二人で一緒に…。

「うん。そうだね。築いていこうね」

「そのためにももう契約書は破棄しよう。俺達に必要ないから」

悠翔が席を立ち、寝室へと向かった。寝室から契約書を持って戻ってきた。

「奈緒も契約書を取ってきて」

そう言われたので、私も自分の寝室へと向かい、契約書を持ってリビングへと戻った。

「取ってきました。契約書です」

テーブルの上に契約書を置く。すると悠翔は目の前で契約書を破り始めた。

「これでもう契約書は存在しない。正式に偽装関係を破棄することができた」

今までずっとルールがあり、そのルールに縛られていた。
でももう私達を縛るものはない。これで私達は自由になったのだから。

「ずっとこの日を待ち望んでいたの。いつか悠翔と本物の夫婦になれたいいなって…」

まさか本当にこの日を迎えることになるなんて。まだ夢の中にいるのではないかと錯覚してしまいそうになる。

「俺だってずっと待ち望んでたよ。奈緒と本物の夫婦になれる日を…」

悠翔もずっと待ち望んでいたんだ。本物の夫婦になれる日を…。
まさか悠翔もずっと待ち望んでいたなんて思いもしなかった。ってことはお互いにずっと想いをひた隠しにしていたということになる。

「そうだったんだ。へぇ……」

嬉しさのあまり、照れて変な反応をしてしまった。
もっと上手い反応を示せばよかったのに。逆に恥ずかしくなってきた。

「せっかくの料理が冷めちゃうから、早く食べよ」

照れてしまったのを誤魔化すために、話題を逸らした。
変な態度を取ったにも関わらず、悠翔は優しく微笑んでくれた。

「そうだな。食べよっか」

二人で一緒に手を合わせて、「いただきます…」と言ってから悠翔が作ってくれた朝食を食べ始めた。
悠翔が作ってくれた朝食はいつも通りの朝食だった。トースターで焼いたパンと目玉焼きにサラダとヨーグルト。
まるでいつも私が作っている朝食が一番美味しいと言ってもらえているような気がした。

「悠翔、作ってくれてありがとう。とっても美味しい」

「こちらこそいつもありがとう。日頃の感謝を込めて、今日は俺が作らせてもらいました」

私には家事ぐらいしかできることがない。その分、悠翔には仕事を頑張ってもらっている。
でも改めてこうやって感謝されると、これまで頑張って家事をこなしてきてよかったと心の底からそう思える。
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