雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜

「今日が終わってほしくないな……」

悠翔がボソッと呟いた。私は悠翔の呟きに共感した。

「うん。終わってほしくないね…」

今日は私達にとって特別な日だ。だからこそ終わってほしくないと強く願ってしまう。

「でも明日からの毎日も楽しみだけどな」

今日が特別な日であったとしても、明日からの毎日の方が大切で。これからの時間の方が長い。

「そうだね。明日からも楽しみだね」

しかし、楽しい時間も終わりを迎える。体力の限界が近づいてきた。

「…そろそろ寝よっか」

悠翔が私が眠いのを察して、寝ることを提案してくれた。

「うん。そうしよっか」

「奈緒、おやすみ…」

「おやすみ、悠翔…」

私達はそのまま眠りについた。今日という特別な日の余韻に浸りながら…。
とても幸せな夢を見た。夢の内容は覚えていないが、良い眠りにつくことができた。
そんな良い眠りから目を覚ますと、翌朝を迎えていた。
とても目覚めの良い朝に、太陽の光が差し込んでいる。気分がとても良い。

「奈緒、おはよう…」

悠翔も目を覚ましたみたいだ。日差しの明るさに、目が覚めたのであろう。

「悠翔、おはよう。良い天気だね」

「そうだな。良い天気だな…」

太陽の光を浴びながら、二人でゆったりとした朝を迎える。

「奈緒、俺と結婚してくれてありがとう」

悠翔に突然、感謝をされた。あまりの突然のことに驚きと嬉しさが入り混ざった。
感謝を伝えたいのは私の方だ。悠翔が居なかったら、今こうして幸せな時間を過ごせていない。

「こちらこそ私と結婚してくれてありがとう」

偽装結婚を選んだばかりの頃の私は、まさか悠翔と本物の夫婦になる未来があるなんて思ってもみなかった。
こうして悠翔と結婚できて幸せだ。これ以上の幸せはない。

「奈緒、俺はいつか俺達の間に子供が欲しいって思ってる。だから奈緒が欲しいなって思ったら教えて」

悠翔と結婚できただけでも嬉しいのに、悠翔と私の子供の未来まで考えることができるなんて。嬉しさのあまり、涙が零れ落ちた。

「奈緒…？！ごめん、いきなりこんなことを言われても困るよな。今のは忘れてくれ」

私が涙を零した理由を、悠翔は拒絶と受け取ったみたいだ。ちゃんと誤解を解くために弁明した。

「ううん、違うの。嬉しくて。私も子供が欲しいって思ってるよ。でも今はまだ二人っきりの時間を大切にしたい」

欲しい気持ちは本当だ。でもそれ以上に今はまだ二人の時間も欲しいと思っている。

「もちろん。俺だって今は二人っきりがいいもん。たとえ子供であったとしても、奈緒との時間を子供に譲れない」

子供に嫉妬している悠翔を想像し、笑ってしまった。

「そうだね。譲れないね」

「だからさ、奈緒。ゆっくり家族になっていこうね。俺達らしく」

今はまだ夫婦だが、いずれ私達に子供が授かり、家族になっていく。
そんな未来を想像しながら、彼と家族になる未来を楽しみに待っていることにした。

「うん。そうだね。私達らしい家族になろうね」


　　　　　　　　　　-END-