雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜

2章:「ルール」

あの後、本当に悠翔さんのお家に引っ越し、一緒に暮らしている。
悠翔さんは本当に引っ越し費用を支払ってくれた。私としてはお金がないため、引っ越し費用を出してもらえて助かった。

「奈緒、これからよろしくな」

片手を差し出してきた。私は悠翔さんの手を取った。

「こちらこそよろしくお願いします」

これで生活費を気にしながらの生活とおさらばできる。そう思った瞬間、開放感に心が躍った。

「早速だけど奈緒。俺達の結婚は偽装結婚という契約結婚だ。一緒に生活していく上で、いくつかルールを決めておきたい」

ルール…か。普通の結婚ならルールなんて存在しない。
この結婚が偽装結婚であるということを改めて再認識させられた。

「ルールですね。どんなルールがあるのか教えてください」

私がそう言うと、悠翔さんは一枚の紙を差し出してきた。

「俺が考えた契約書だ。訂正してほしい契約や追加してほしい契約があったら遠慮せずに言ってほしい」

渡された契約書に目を通した。契約内容は以下の通りである。

1.偽装結婚中は他の人と恋愛をしてはならない。

2.生活費や金銭面などは全て夫が負担する。

3.家のことは妻が全て負担する。(例:家事や料理、掃除…など)

4. 偽装結婚とバレないように夫婦の寝室を一応用意するが、お互いにそれぞれの部屋を用意し、プライベートな空間を作り、それぞれのプライベートを守る。

5.性的行為は一切禁止とする。性的欲求を刺激する行為も禁止とする。

6.必ず食事は一緒に食べる。

7.決してこの秘密を漏らしてはならない。外に漏らした場合、即偽装結婚は終了とする。

特に契約内容に関して、訂正してほしい契約や追加したい契約はない。
どちらにも配慮された契約内容なため、私としては大変有難い。

「特に問題はありません。これで大丈夫です」

「それじゃこの契約書にサインをしてほしい。お互いにこの契約を守れなかった場合は契約違反として離婚してもらうことになる」

契約違反ともなれば離婚するのは当然だ。できるだけ契約違反にならないように気をつけようと思う。

「分かりました。違反しないように気をつけようと思います」

再度、契約書に目を通した。改めて内容を確認する。
まず一番に関しては当たり前だ。いくら偽装結婚とはいえども既婚者ではあるため、他の人に恋愛感情を抱くなんてあってはならない。
今の私は恋愛感情を抱くこと自体があってはならない。悠翔さんに対しても。それ以外の人に対しても。

「そうか。それなら良かった。これからよろしくな」

戸籍上は夫婦になるが、あくまで私達の関係は契約で結婚をしただけのただの同居人。
だからこそ共同生活を送る上で、お互いにある程度のルールは必要だ。意外だったのは、“必ず食事は一緒に食べる”…といったルールだ。
一人で食事を食べるよりは、誰かと一緒に食べる方が美味しい。
だけど私達は偽装結婚した偽りの夫婦だ。一緒に食事をする仲ではない。
どうして一緒に食事をするルールを設けたのだろうか。それだけが気になった。
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