雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「よし。これでいいだろう。絆創膏は定期的に変えろよ」

ぶつかったのはこちらなのに、丁寧に手当てをしてくれた。
ここまでしてもらったのだから、お礼を伝えないと…と思い、この男性にお礼を伝えることにした。

「あの…、ぶつかったのはこちらなのにも関わらず、手当てまでして頂いてありがとうございます」

私がお礼を伝えると、自分は何も特別なことはしていないといった表情を浮かべた。

「いや、こっちもよそ見をしてたから、ぶつかったのはあんただけのせいじゃない。だから手当てをした。それまでだ」

ぶつかったのが自分だけのせいじゃないと分かり、安堵した。
これももしかしたらこの男の優しさなのかもしれないが、今はその優しさを素直に受け取ることにした。

「そうでしたか…。それならよかったです」

これ以上ここに居ると迷惑をかけてしまうと思い、そろそろお暇しようとソファから立ち上がった。

「あの…、そろそろ…」

「なぁ、夕飯は食べたか?」

思ってもみない男の問いに、私は戸惑った。
これはつまり夕飯に誘っているということだろうか。言われてみればもうそんな時間だ。

「まだです…」

「そうか。それなら家で夕飯を食べてかないか?俺が作るから」

何故、この男がここまで良くしてくれるのか、私にはよく分からなかった。

「どうしてそこまで良くして下さるんですか?」

見返りもなしに何かしてくれる人なんていない。
だから疑ってしまう。本当はこの後、何かされるのではないかと。
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