雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「私だって嫌ですよ。悠翔さんは旦那さんじゃないと…」

こういう会話をしていると、この結婚が偽装結婚であることを一瞬忘れてしまう。
悠翔さんは私に対して恋愛感情なんて一ミリも抱いていない。
そんなことは分かっているはずなのに、心の奥底が悲鳴を上げているような気がした。

「奈緒にそう思ってもらえて嬉しい。そう思ってもらえてなかったから悲しかったよ」

運転している彼を横目で盗み見る。真剣な表情で言葉を紡いでいた。
勘違い…してもいいのかな?なんて心が揺らぎそうになる。
でもグッと気持ちをしまい込んだ。この気持ちが膨らんでも実ることはないから。

「偽装とはいえでも夫婦ですからね。私もそう思ってもらえて嬉しいです」

棘のある言い方をしてしまったかもしれない。わざわざ偽装であることを口に出す必要はなかったと思う。
それでも偽装であることを口に出さないと、私の気持ちのブレーキが利かなくなりそうで怖かった。

「そうだな…」

そこで会話は途切れた。私の言葉に悠翔さんは傷ついていた。
偽装を提案したのは悠翔さんなのに、どうして悲しい顔をするのか分からなかった。
その後はお互いに気まずくなり、沈黙の時間が流れた。
両親への挨拶の前なのにこんな感じで大丈夫かな?と不安に思ったが、先に沈黙を破ったのは悠翔さんだった。

「もうすぐで奈緒ん家に着くな」

ナビのモニターを見ると、確かにもうすぐで私の実家に着くみたいだ。

「そうですね。あともう少しですね」

「奈緒ん家って俺の車を停めるスペースってある?」

私の実家は住宅地が密集している住宅街で。隣家とのスペースがあまりなく、庭も広くないため、悠翔さんの車を停めるのは厳しい。

「すみません。スペースがなくて厳しいです…」

「そうか。分かった。近所に駐車場がないか調べてもらってもいいか?」

それぐらいなら私にでもできそうだ。急いで検索をした。
するとすぐに家の近所の駐車場がヒットした。それを悠翔さんに伝えた。

「ありました。ここなら実家から近いです」

私でも説明できそうな場所に駐車場があった。
助かった。駐車場が近くになかったら悠翔さんに迷惑をかけるところだった。

「それなら助かる。早速ナビを設定してもらってもいいか?」

「了解です。すぐに設定するのでお任せください」

急いでナビを設定した。そのお陰で無事に駐車場に辿り着き、駐車することができた。
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