雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「もしかしてシュークリームを選んだのって、私とお父さんが好きだから?」

それはバレているみたいだ。母の勘の鋭さには脱帽した。

「そうだよ。少しでも悠翔さんの印象を良くするためにね」

ただでさえ普通の結婚ではないため、そういった細やかな気遣いに必要以上に気を配ってしまう。
秘密がバレたら絶対両親に反対されるであろう。当たり前だ。自分の娘に偽装結婚なんてさせる親がいるわけがない。
実際、親を目の前にすると胸が痛かった。親はこの結婚が偽装結婚だと知らないから。

「内助の功ね。早速、良い奥さんしてるじゃない」

フリだけだが、それなりに頑張っている。悠翔さんの奥さんとして…。

「そうかな?そう言ってくれてありがとう」

「お父さんね、久しぶりに奈緒が帰ってくるって聞いて最初は喜んでたんだけどね、紹介したい人がいるって言ったら急に機嫌が変わっちゃって。父親としては複雑なのよ。娘が結婚することは嬉しいけど、その相手が変な男じゃないか心配で…」

お父さんの気持ちはよく分かる。娘のことが心配なことはちゃんと伝わっていたから。
あんなにも機嫌が態度に現れる父をなんだか可愛いらしいなと思った。

「だから奈緒、シュークリームを買ってきてくれたのは正解よ。これで少しはお父さんの好感度も上がってるはずだから」

そうであってほしいと願った。私のためにも、悠翔さんのためにも。

「さて、運びますか。さすがに待たせている悠翔さんが可哀想だからね」

母も悠翔さんのことを気にかけているみたいだ。
今のところ父と上手く会話しているみたいなので問題なさそうだが、あまり待たせすぎてしまったら悠翔さんの負担が大きくなってしまう。そろそろ限界であろう。

「そうだね。そろそろ運びますか」
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