雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「奈緒、今夜はデリバリーでも頼もっか」

「いいんですか?ありがとうございます…」

「いいよ。いつも奈緒には頑張ってもらってるからね」

私がまだ夕飯の準備をしていなかったことを、悠翔さんは咎めなかった。
寧ろ私を労ってくれた。その心遣いが嬉しかった。

「奈緒は俺の奥さんとして、家のことを頑張ってくれてるんだから、これが奈緒の立派な仕事だよ。無理して外で働こうなんて考えなくていい。奈緒には家の中で明るく笑っていてほしいから」

再び涙が零れ落ちた。先ほどの涙とは違い、今度は嬉しさのあまり涙が溢れ出た。

「悠翔さん……っ!!」

悠翔さんの背中に抱きついた。この想いを伝えるために…。

「私に居場所を与えてくださり、本当にありがとうございます。私にできることだけを頑張ります。私がこれからも明るく笑って過ごせるように。そして悠翔さんにも明るく笑顔で過ごしてもらえるように…」

何もできないことを恐れて、自分で勝手に何もできなくしていた。
でもそんな私でもできることがあると、悠翔さんが気づかせてくれた。
いつか心の霧が完全に晴れて、外に出て働ける日が訪れるかもしれない。
それまでは悠翔さんの奥さんとして、専業主婦を満喫してみるのもいいかもしれない。
焦ったところでそんな簡単に人は変われない。変化が訪れるまで今の自分を受け入れて、今の自分にできることだけを頑張ろうと思う。

「俺は奈緒が傍に居てくれたらそれだけで嬉しいよ」

好きな人にそんなことを言われてしまったら、ときめかずにはいられなかった。

「それならよかったです…」

照れている表情を悠翔さんに見られないようにするためにわざと俯いた。
悠翔さんの気持ちが読めない。私ばかり心が乱されている。
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