雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「実は仕事終わりに寄って買ってきたんだ。奈緒に喜んでほしくて」

まさか仕事終わりに買ってきてくれたなんて知らなかった。
そもそも帰宅したら私が倒れていたからそれどころではなくなってしまったわけだが…。

「そうだったんですね。ありがとうございます。いただきます…」

悠翔さんの想いをちゃんと受け止めながら、プリンを食べることに…。
スプーンで一口サイズに掬って口元まで運ぶ。
プリンを口に含んだ瞬間、あまりの美味しさに衝撃を受けた。
まずプリンの味が優しい甘さで美味しい。
それでいて滑らかな口通りがとても食べやすい。
美味しすぎるあまり手が止まらず、またしてもあっという間に食べ終わってしまう。

「奈緒、今日は相当お腹が空いてたみたいだな」

悠翔さんが私の食べっぷりを見て指摘してきた。
悠翔さんに指摘されて恥ずかしかったが、今日は美味しいものを食べさせてもらったので悪い気はしなかった。

「そうみたいです。いつも以上に食べちゃいました」

悠翔さんと初めてご飯を一緒に食べた時も思ったが、やっぱり誰かとご飯を一緒に食べるといつも以上に美味しく感じる。
だからいつも以上に食べてしまう。そして相手にもそう思ってほしいと願ってしまう。

「俺もいつも以上に食べちゃった。奈緒と食べる飯が一番美味しいな」

そんなことを言われてしまえば、私の心はどんどん悠翔さんに惹かれていく。
もう引き返せない。好きになってしまった気持ちは消せない。

「そう言ってもらえて何よりです。私も悠翔さんと一緒に食べるのが楽しくて好きです」

思わず心の声が漏れてしまった。好きなんて言うつもりはなかった。ずっとこの気持ちは隠しておこうと思っていたのに。
悠翔さんを好きなことはバレていないはず。
でもこの気持ちがバレてほしいような、バレてほしくないような…。
悠翔さんは私のこと、どう思っているのだろうか。好きって気持ちが芽生えた瞬間、相手の気持ちが気になり始めた。

「俺も好きだよ。奈緒と一緒に居ると落ち着く」

そんな風に言われてしまえば、頭の中は悠翔さんのことでいっぱいになってしまう。
悠翔さんは本当にずるい人だ。これで私に気がなかったら、私は人間不信になりそうだ。
でも本当は分かっている。悠翔さんは優しい人だから、私を放っておけないだけだと。
それでもずっと傍に居てくれると約束してくれた悠翔さんの言葉を信じることにした。
いつか訪れる終了を待って怯えるよりも、悠翔さんと一緒に居られる時間を大事にしようと思った。
だから悠翔さんが私に気がなくても、悠翔さんと一緒に過ごせた思い出を胸に大切にしまっておこうと思う。
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