雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「奈緒、来週末には仕事が落ち着いてると思うから、一緒に出かけないか?奈緒は何がしたい?」

まるで今までの時間を埋めるかのように、悠翔さんが寄り添ってくれる。
悠翔さんの気持ちは嬉しいが、私に気を遣ってそう言ってくれているのであれば、無理はしないでほしい。
素直に気持ちを受け止めたいが、彼への恋心を自覚してから私の心は複雑だ。

「そうですね、急に言われても何も思い浮かばないので、時間をもらってもいいですか?」

私は正直、悠翔さんと一緒に居られればそれだけでいい。特に何もしたいことなんてない。今日みたいに一緒にご飯を食べて、お話する時間があればそれだけで充分だ。
でも悠翔さんは違うかもしれない。何かしないと私と一緒に居られないのかもしれない。
それに私は悠翔さんのことを何も知らない。悠翔さんはどんなことをするのが好きなんだろうか。
そもそも男性とこうやって一緒に過ごすことが久しぶりなので、何をするのが正解なのか分からない。

「いいよ。奈緒がしたいことをゆっくり考えてね」

私が悠翔さんとしたいこと…。
自分の気持ちとゆっくり向き合えば思い浮かべることができるのかな?
私にはハードルが高い要求だ。悠翔さんが考えてくれる方が有難い。

「あの…、どんなことでもいいんですか?」

せめてヒントが欲しいと思い、悠翔さんに問いかけてみた。
すると悠翔さんは優しく私の問いに答えてくれた。

「どんなことでもいいよ。奈緒には思う存分甘えてほしいから、好きなだけ奈緒の我儘を叶えたい」

この家に住まわせてもらっている時点で、私の我儘はもう充分すぎるほど叶っている。

「私の我儘はもう叶ってますよ。この家に住んで居ますから」

「奈緒は欲がないな。俺なんて欲だらけだぞ。仕事のせいで奈緒と一緒に過ごすことができなかったから、ストレスがすごい溜まってるし」

そんな風に思っていたなんて知らなかった。
そう思ってもらえていたことが嬉しかった。

「だから奈緒、もっと我儘を言ってほしい。奈緒の我儘なら何でも叶えたい」

悠翔さんの言葉を聞いて、勝手に悠翔さんに遠慮していた自分を恥じた。
私の願いを悠翔さんに伝えることにした。悠翔さんなら私に気を遣わずに願いを叶えてくれるはず。
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