雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「ご馳走様でした。食べ終わるまで待ってますので、私が洗い物をしちゃいますね」

席を立ち、自分の食器を流しに置いた。
男が食べ終わるまで洗うのを待つため、一旦ダイニングテーブルの方に戻った。

「もしかしてお礼に…ってことか?」

男には自分で勝手にお礼を決めたと思われたみたいだ。
でも私はそんなつもりはなかった。お礼はお礼として別で、食べさせてもらったからせめて洗い物くらいは…といった気持ちだった。

「勝手にお礼を決めたわけじゃないです。お邪魔させてもらって、ご飯も頂いたので、せめて洗い物くらいは…と思って、勝手に行動に出ました。すみません…」

言い訳だけはさせてもらった。誤解を解きたかったから。

「いや、そんなつもりで言ったわけじゃないんだ。それがお礼になるならそれでいいと思っただけだ」

もしそれがこの男にとってお礼になるのであれば、それはそれで構わない。
でもそれでは違う。この男がして欲しいと思ったことをやるのがお礼だ。

「あなたの望みがそれでいいのでしたらそれでいいですけど、もし他にお願いしたいことがあるのでしたら、お願いして欲しいです」

一番は相手の望みを叶えることだ。そうでないとお礼にはならない。

「あんたって独身か?」

突然、脈絡のない問いに困惑している。一体、何の意図があって聞いているのだろうか。

「独身ですけど…」

「恋人は?」

先程、手は出さないと言っておきながら、恋人の有無を問う。
これってもしかしてやっぱり…。男の人を簡単に信用した自分が悪い。
だからこの人を責められない。自業自得というやつだ。

「いません。それがどうかしましたか?」

無意味かもしれないが、小さな抵抗はしてみた。
いざ押し倒されたら、男の人に力でなんて勝てない。
相手を怒らせない程度に、口で抵抗するしかなかった。

「あんたさえ良ければ、俺のところに来ないか?」

最近、雨が降り続いているのは梅雨のせいか。なんてことをふと頭の中で思った。
梅雨のせいで頭が重くて、おかしな現象が起きているのかもしれない。
自分の耳が聞き間違えたことよりも先に、低気圧のせいで重い頭の方を先に疑ってしまうくらい、今の私には自分史上、一番おかしな出来事が起きていたのであった…。
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