雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜
「今日奈緒さんとお会いして安心しました。悠翔は完全に奈緒さんにぞっこんですね」

悠翔さんが私にぞっこん…?一瞬、耳を疑った。そんなわけがないと。

「悠翔が誰かを心から愛せるようになって良かった。これで俺も安心して結婚できます」

石動さんは私が偽装結婚の相手だと知らないから、本音で色々話してくれている。
何も知らない私が聞いてはいけないお話だったと思う。
でももう聞いてしまったので、なかったことにはできない。悠翔さんの過去も気になるし、悠翔さんが私にぞっこんなんて信じられない。
もし石動さんのお話が本当だとしたら、あまりにも自分の都合に良過ぎて逆に信じられない。
悠翔さんが私を好きになる理由がない。私があまりにも可哀想だから手を差し伸べてくれただけに過ぎない。
それぐらい私にとっては夢みたいなお話で。全く現実味がなかった。

「ちなみに二人の婚姻届の保証人は俺だからね」

そういえば保証人は悠翔さんの方で頼んでいると言っていた。
その相手がまさか石動さんとは思ってもみなかった。

「そうだったんですね。その節はありがとうございました」

「いえいえ。俺の婚姻届の保証人は是非、二人にお願いするね」

「悠翔さんは分かりますが、私でいいんですか?」

「奈緒さんがいいんです。だって悠翔の大事な人だから」

今日出会ったばかりの私にお願いしてもいいの?たったそれだけの理由で?と思ったが、石動さんにとって大事な決め手がそこなのかもしれない。

「石動さんがそれで良いのでしたら、是非よろしくお願いします」

本当のことは言えないが、石動さんは私が悠翔さんにとって大事な人だと信じてもらえたみたいだ。
罪悪感はあるが、無事にバレずにやり遂げられたことに安堵している。

「二人で何を話してたんだ?」

悠翔さんが戻ってきた。正直、助かった。これ以上二人っきりにさせられたら、ボロが出ていたかもしれない。

「俺が奈緒さんとどんなことを話してたか気になるんだ。へぇー」

「俺を揶揄うのは勘弁してくれ。で、何の話をしてたんだ?」

「俺の婚姻届の保証人に悠翔と奈緒さんになってほしいってお願いしてただけだよ」

「なんだ。そのことか。奈緒が嫌じゃなければいいか?」

「先程、奈緒さんから許可を頂いたから問題ないよ」

「凌大には聞いていない。俺は奈緒に聞いてるんだ」

きっと私のことを心配して、聞いてくれたんだと思う。
正直なことを言えば、ここで断っておいた方が身のためだ。これ以上関わりを持てば絶対にボロが出てしまう。
でも石動さんは私に大事な役目を任せてくれた。その石動さんの気持ちに応えたい。
だからこのお願いを引き受けたい。悠翔さんの奥さんという役目を果たすために。
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