鳴神くんは理想の男子? 〜本好きの地味子ですが、陽キャな後輩くんになぜか懐かれています〜

「ぐは……っ」

 彼の回し蹴りがまともに脇に入り、もんどり打って吹っ飛んでいく御影。
 ナイフが落ちる軽い音が響いて、直後どさっと御影は地面に倒れ込んだ。

(終わっ、た……?)

 と、一度大きく咳き込んだ御影が、仰向けのまま掠れた声で言った。

「やっぱ敵わねーか……。ズリィっすよ、一人で勝手にそっち側行っちまって。俺たち、これからどうすりゃいいんスか……」
「そのくらい自分たちで考えろ」
「ハっ……冷てーの」

 でも、その後で彼は……元総長の鳴神くんは静かに続けた。

「俺の我儘に長いこと付き合わせて悪かったな。お前らには感謝してる。……ありがとう」

 そのいくらか穏やかな声に、周りからすすり泣くような声が聞こえてきた。
 御影も大きく目を見開いてから、満足げな顔で目を閉じた。

「やっぱ、ズリィな~」

 ……どうやらちゃんと決着がついたようで、私はゆっくりと肩を下ろした。


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