鳴神くんは理想の男子? 〜本好きの地味子ですが、陽キャな後輩くんになぜか懐かれています〜

8 理想の男子


「大丈夫ですか、鈴音先輩!」

 こちらに駆け寄ってくる彼は、もういつもの鳴神くんに戻っていた。

「すみません、俺のせいでこんなことになってしまって」

 申し訳なさそうに言いながら、彼は近くに落ちていたカッターナイフで私の手足を縛っていた結束バンドを切ってくれた。

「うわっ、赤くなっちゃってるじゃないですか!」

(……いつもの、鳴神くんだ)

 そんな彼を見たら一気に安心してしまって、不覚にもじわりと涙が出てきた。
 でも。

「あいつら、やっぱもう一度シメてやろうか……」
「!? こ、こんなの何でもないから!」

 また彼から殺気めいたものを感じて、私は慌ててぶんぶんと手を振った。

 ……お蔭で涙は引っ込んだ。

「ほんとですか? あいつらにほんとに何もされませんでした?」
「何もされてない!」

 彼のほっとした笑顔を見て、こちらも激しくほっとする。
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