鳴神くんは理想の男子? 〜本好きの地味子ですが、陽キャな後輩くんになぜか懐かれています〜

「とりあえず、ここ出ましょうか」
「うん」

 手を差し出されて、私はその手を取って椅子から立ち上がろうとして――。

「あれ?」

 そのまま、ぺたんと地面に座り込んでしまった。

「鈴音先輩?」

 ……どうやら完全に腰が抜けてしまったみたいだ。

「ご、ごめん、私……」

 カッコ悪すぎて、また涙が出そうになる。
 どうしても足に力が入らない。立ち上がることが出来ない

 と、そのときだ。

「ちょっと失礼します」
「え……っ!?」

 視界が急に暗くなったと思ったら彼の吐息を近くに感じた。
 そして次の瞬間、私は鳴神くんに抱き上げられていた。

(――!?)

 所謂、お姫様抱っこ。
 あまりに急な少女マンガ的展開に私が口をパクパクさせていると、彼はにっこりと笑って言った。

「せめて駅まで送らせてください」

 返事もまともに出来なくて、私はただ何度もこくこくと頷いた。


 ――そうして、私たちはその倉庫を出たのだった。


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